60歳で定年退職したら失業保険はいくらもらえるのか ?
そしていつまでもらえるのか ?
とても気になりますよね。
年金は65歳にならないともらえないから、それまでは働かないといけない。
でも、これまで40年近くも働いてきたのだから少し休みたいし・・・。
その間、失業保険でつなげるだけもらえるのでしょうか ?
初めにざっくりお伝えしておきますね。
もらえる額は
・それまでもらっていた給与の45~80%
もらえる期間は
・90日間~150日間
ここでは、60歳で定年退職したら失業保険はいくらなのか、そしていつまでもらえるのかについて具体的な例をあげて詳しく解説してゆきます。
60歳で定年退職して失業保険をもらえるか ?
定年退職した場合でも、条件さえ満たしていれば失業保険をもらうことができます。
はじめに申し上げておきますが、失業保険(正しくは雇用保険の基本手当)は、働く意思があって求職していることが前提ですよ。
それでは、失業保険をもらえる条件を確認しておきましょう。
失業保険をもらえる条件
失業保険は、雇用保険に加入していた期間が条件となります。
ただし、自己都合の場合は「厳しく」、会社都合の場合は「ゆるく」設定されています。
[自己都合で退職した場合]
・離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヵ月以上あること
[会社都合で退職した場合]
・離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6ヵ月以上あること
定年退職は会社都合でしょうか、それとも自己都合でしょうか ?
会社の決まりなので、当然会社都合と思いますよね。
でも、
じつは会社都合とはならない !
のです。
その理由は「継続雇用制度」にあります。
60歳で定年退職すると自己都合扱いとなる
60歳で定年退職すると「継続雇用制度」のため会社都合ならない、つまり自己都合扱いとなることは上で述べた通りです。
継続雇用制度とは、公的年金の受給開始時期が60歳から65歳に引き上げられたために、60歳以上の雇用を確保するための制度です。
そして、2025年4月1日からは「65歳までの雇用確保」がすべての会社の義務となることが決まっています。
それまでの間、「経過措置」として、徐々に雇用義務の年齢が引き上げられてゆきます。
下の表をご参照ください。
時期 | 雇用義務の年齢 |
2019年4月~2022年3月 | 63歳まで |
2022年4月~2025年3月 | 64歳まで |
2025年4月以降 | 65歳まで |
このように、会社は定年後にさらに継続して雇用する制度を設けなければならない義務があるのです。
これが「継続雇用制度」なのです。
ですから、60歳で退職してしまった場合は、「自己都合」となります。
したがって60歳で退職したときの失業保険をもらえる条件は
・離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヵ月以上あること
となります。
そして、7日間の待機期間の後2ヵ月の給付制限期間が設けられます。
ですから60歳で退職した場合は退職から3ヵ月目にならないと失業保険をもらうことはできないのです。
まんいち、何らかの事情で会社に継続雇用してもらえなかったら、その場合は会社都合(特定受給資格者)となりますので、失業保険をもらえる条件は
・離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6ヵ月以上あること
となります。
この場合は7日間の待機期間が終われば失業保険をもらうことはできます。
60歳で定年退職~失業保険はいくらもらえるか ?
ではいよいよ「いくら」もらえるかを確認しましょう。
冒頭述べたようにざっくり、それまでもらっていた給与の45~80%です。
ここでは正確に算出する方法を解説します。
基本は退職前6ヵ月間の給与から計算される基本手当日額です。
例えば基本給+手当(役職手当・扶養手当・残業代など)が月額380,000円としてみましょう。
はじめに、6ヵ月の平均の1日当たりの賃金を求めます。
これを賃金日額と言います。
賃金日額 = 380,000/月 x 6ヵ月÷ 180 = 12,666円
60歳から64歳の場合は、賃金日額から基本手当日額を下の表で計算します。
[離職時の年齢が 60~64 歳]
賃金日額(円) | 給付率 | 基本手当日額(円) |
①2,500 円以上 5,010 円未満 | 80% | 2,000 円~4,007 円 |
②5,010 円以上 11,090 円以下 | 80%~45% | 4,008 円~4,990 円 (※1) |
③11,090 円超 15,890 円以下 | 45% | 4,990 円~7,150 円 |
④15,890 円(上限額)超 | – | 7,150 円(上限額) |
給付率が変動する場合は次の計算式によって算出します。
※1次のいずれかの低い方
・基本手当日額 = 賃金日額 x 80% – 賃金日額 x (賃金日額-5,010)/6,080) x 0.35
・基本手当日額 = 賃金日額 x 50% + 4,436
この例では賃金日額が12,666円で賃金日額 = 380,000/月 x 6ヵ月÷ 180 = 12,666円ですから、上の表の③に該当します。
基本手当日額
= 賃金日額 x 45%
= 12,666円 x 45%
= 5,699円
これが定年退職時に月額380,000円もらっていた人がもらえる失業保険の日額です。
もう一例見ておきましょう。
今度は、定年退職時に月額330,000円の場合を例にとります。
賃金日額 = 330,000/月 x 6ヵ月÷ 180 = 11,000円
なので、上の表の②に該当します。
基本手当日額は次のいずれか少ない方です。
(a)基本手当日額 = 賃金日額 x 80% – 賃金日額 x (賃金日額-5,010)/6,080) x 0.35
(b)本手当日額 = 賃金日額 x 50% + 4,436
順に計算してみます。
(a)
基本手当日額
= 11,000 x 80% – 11,000 x (11,000-5,010)/6,080) x 0.35
= 8,800円 – 3,793円
= 5,007円
(b)
基本手当日額
= 11,000 x 50% + 4,436
= 9,936円
結果として(a)の法が少ないので
基本手当日額= 5,007円
となります。
もらえる失業保険の総額は、この基本手当日額 x 給付日数です。
何日分もらえるのか、次の章で確認しましょう。
60歳で定年退職~失業保険の給付日数は何日か ?
失業保険の給付日数は、雇用保険の加入期間で決まります。
定年退職の場合
60歳で定年退職した場合は自己都合退職となりますから、失業保険支給期間は次のようになります。
雇用保険加入期間 | 失業保険支給期間 |
1年以上10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
先ほど算出した基本手当日額に上の表の支給期間を掛けた額がもらえる失業保険の総額となります。
定年退職時の給与月額が380,000円の場合と330,000円のはの両方の例で確認してみましょう。
また、いずれも20年間勤めていたと仮定します。
退職時の月給380,000円だった人
失業保険の総額
= 基本手当日額 x失業保険支給期間
= 5,699円/日 x 150日
= 854,850円
退職時の月給3月額330,000円だった人
失業保険の総額
= 基本手当日額 x失業保険支給期間
= 5,007円/日 x 150日
= 751,050円
これが60歳で定年退職した人がもらえる失業保険の総額です。
注意すべきことは、転職などで失業保険を使ったことがある人は、その時点で雇用保険加入期間はリセットされているということですね。
継続雇用してもらえなかった場合
次に、何らかの理由で継続雇用してもらえなかった場合の給付日数です。
6ヵ月以上1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
定年退職した場合に比べて、働きたいのに継続雇用してもらえなかった場合は、最長240日間も失業保険を受けることができるのです。
定年退職で失業保険の申請手順
ここで、定年退職後の失業保険の申請手続きについて触れておきましょう。
必要書類等
失業保険の申請に必要な書類等は次の通りです。
①離職票―1
②離職票―2
③マイナンバーカード(またはマイナンバー通知カードかマイナンバーが記載されている住民票)
④本人確認書類 (1)のいずれか1つ。または(2)の異なる2種類(いずれもコピー不可)
(1)運転免許証、運転経歴証明書、官公庁発行の身分証明書・資格証明書(写真つき)など
(2)公的医療保険の被保険者証、年金手帳、住民票記載事項証明書、公共料金の領収書など
⑤写真2枚(最近の写真、正面上半身、タテ3.0cm×ヨコ2.5cm)
⑥印鑑(認印可、スタンプ印不可)
⑦本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
これらを管轄のハローワークに持参して失業保険の申請を行います。
書類などの確認が済むと雇用保険説明会の日時が案内されます。
雇用保険説明会への参加
指定された日時にハローワークに行って、雇用保険説明会に参加します。
この時「失業認定日」が決定します。
失業認定日まで求職活動をしなければなりません。
認定日ごとにハローワークに行って求職活動の報告をする
失業保険をもらうに、実際に休職活動を行って認定日ごとにハローワークに行って報告をする必要があります。
具体的には、「失業認定報告書」に求職活動の状況等を記入して、「雇用保険受給資格者証」と一緒にハローワークに提出するのです。
それによって、失業手当が登録した口座に振り込まれます。
失業保険は特別支給の老齢厚生年金とは同時にもらえない
もらえる人は限られていますが、「特別支給の老齢厚生年金」というものがあります。
老齢年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた時に設けられた制度です。
次の条件を満たす人がもらうことができます。
・満60歳以上であること
・老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上あること
・厚生年金保険等に1年以上加入していたこと
・男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと
・女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと
詳しくはこちらをご参照ください。
特別支給の老齢厚生年金の収入制限は ? 請求して損はない !
条件に合致する方は「ラッキー !!」と思うことでしょう。
ただし、特別支給の老齢厚生年金は失業保険と同時にもらうことはできませんので、ご注意くださいね。
どちらか金額の多い方を選ぶと良いですよ。
参考 : 日本年金機構
年金と雇用保険の失業給付との調整
60歳以上なら失業保険の受給開始を1年間延長できる
失業保険の受給期間は、退職した日の翌日から1年間で、申請の期限も1年間以内に限られています。
そして、受給期間は申請の時期に関係なく退職後1年間ですから、申請が遅れればその分失業保険をもらえる期間が短くなってしまいます。
つまり、受給期間中に失業保険を受け取らなければ、給付日数が残っていても受け取れなくなってしまうのです。
ただし60歳以上で定年退職した場合は、離職日の翌日から2ヵ月以内に申し出れば、1年を限度に受給開始時期を先送りすることができます。
その際の必要書類は次の2つです。
・受給期間延長申請書
・離職票
受給期間延長申請書には、申請の理由を各欄がありますので、「定年退職後、一定期間の休養を希望」などと書けば良いですよ。
おわりに
いかがでしたか ?
60歳の定年退職で失業保険はいくらで、いつまでもらえるのかについて、また、継続雇用制度との関係についてお伝えしてきましたが、参考になりましたでしようか ?
最後までお読みくださってありがとうございました。