スポンサーリンク

高年齢再就職給付金と再就職手当はどっちが得 ? 試算の結果。

高年齢再就職給付金か再就職手当か ? どっちが得なんだろう・・・

定年退職後に失業保険をもらい、さらに再就職した場合は「高年齢再就職給付金」か「再就職手当」のいずれかを受けることができます。

 

ここでは「高年齢再就職給付金」か「再就職手当」のどちらが得か、いくつかのケースを例としてシミュレーションして解説していきます。

 

ちなみに定年後も同じ会社で働く場合は、良く似た制度の「高年齢雇用継続基本給付金」をもらうことができます。

「高年齢再就職給付金」と「高年齢雇用継続基本給付金」の違いは失業保険(雇用保険の基本手当)をもらっているかどうかで、金額の算出方法は同じです。

詳しくはこちらをご参照ください。
再雇用と再就職の違い~これを知ればどちらが得かが分かる !

 

スポンサーリンク
スポンサーリンク

高年齢再就職給付金をもらいながら働く場合

60歳以上の人が失業保険をもらいながら求職活動をして再就職した場合、賃金が60歳到達時の75%未満に低下した場合は「高年齢再就職給付金」をもらうことができます。

 

支給額の算定は、次のようになります。

 

高年齢再就職給付金の支給額

高年齢雇用継続基本給付金は、最大で再雇用後の賃金の15%が支給されます。

 

再就職後の賃金が60歳到達時の61%以下なら支給率は15%で、賃金低下率が62%~74%なら13.7%~0.88%まで賃金低下率に応じて下表のように変わります。

 

現在の給料の60歳時の賃金に対する割合高年齢再就職給付金の60歳以降の賃金に対する支給率
75%0.00%
74%0.88%
73%1.79%
72%2.72%
71%3.68%
70%4.67%
69%5.68%
68%6.73%
67%7.80%
66%8.91%
65%10.05%
64%11.23%
63%12.45%
62%13.70%
61%以下15.00%

 

注意・支給率の上限

高年齢者雇用安定法の2001(令和3)年4月の改正で、70歳までの就業確保措置が努力義務とされたことを踏まえて、支給率の上限の変更が予定されています。

[支給率の上限]

2025(令和7)年7月3日まで : 15%
2025(令和7)年7月4日以降 : 10%

ただし、経過措置として2025(令和7)年3月31日までに60歳に達している人は15%のまま据え置かれます。
出典 : 厚生労働省
高年齢雇用継続給付の見直し

 

上の表は簡便なものですが、正確に式を表すと以下のようになります。

 

高年齢再就職給付金の計算式

①低下率が61%以下の場合 : 支給対象月の賃金×15%
②61%超75%未満の場合 : -183/280×支給対象月の賃金+137.25/280×再雇用後の賃金月額

 

ちょっと面倒ですね。

 

なお、支給率だけでなく支給額にも上限があります。

 

2022年8月1日からは364,595円が上限です(毎年8月1日以降に見直されます)。

 

支払いを受けた賃金額と高年齢再就職給付金の合計が支給限度額を超える場合は、

 

支給額 = 364,595円 - 支給対象月に支払われた賃金額

 

となります。

 

また、年金をもらっている場合は高年齢再就職給付金をもらうと年金がカット(支給停止)されることがあります。

 

高年齢再就職給付金の支給率が高いほど年金の支給停止率が高くなり、最大で6%がカットされます。

 

年金カットの仕組みは「高年齢雇用継続基本給付金」と同じですので、具体的にいくらカットされるかはこちらをご参照ください。

高齢者が継続雇用給付金をもらうと年金がカットされる !?

 

 

高年齢再就職給付金の支給期間

もらえる期間は失業保険の受給残日数によって異なります。

 

支給残日数が

・200日以上は2年間

・100日以上は1年間

です。

 

ただし、失業保険の支給残日数が残っていても、年齢が65歳に達すれば打ち切られます。

 

なお、高年齢再就職給付金は次の述べる再就職手当をもらった場合は支給されません。

 

 

再就職して再就職手当をもらう場合

失業保険をもらいながら求職をして、再就職した場合、「高年齢再就職給付金をもらいながら働く」ほかに、「再就職手当」をもらうという選択肢があります。

 

先ほどお伝えしたように、両方の併給はできません。

 

「再就職手当」には年齢制限はありませんがもらえるのは1回だけです。

 

もらえる額は

 

再就職手当支給額 = 基本手当日額 x支給残日数 x支給率

 

で、支給率は、支給残日数が3分の1以上なら60%で、3分の2以上なら70%となります。

 

基本手当日額とは

離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(賞与等は除く)の合計を180で割って算出した金額

 

 

再就職手当と高年齢再就職給付金はどっちが得か ?

再就職手当は1回だけで、高年齢再就職給付金は1年間もしくは2年間もらえますから、明らかに高年齢再就職給付金の方が得のように感じますよね。

 

ところが、そうとは限らないのです。

 

退職前の給料が高く、再就職後の給料が退職時の61%以下なら高年齢再就職給付金の方が得

 

となる可能性があります。

 

具体的な例で見ておきましょう。

 

60歳で退職して失業保険を30日間受給した後で再就職が決まったとしましょう。

 

ケース1 : 再雇用後の給料が60歳時の給料の7割になった場合

 

60歳退職時と再就職後の雇用条件を次のように仮定します。

 

試算条件1

・退職時の給料(月額)  300,000円
・年齢 60歳 ・退職時の勤続年数 25年
・失業保険受給済み日数 50日間
・再雇用後の給料 210,000円

 

基本手当日額

= 300,000 x 6 ÷ 180

= 10,000円

 

となると思うかも知れませんね。

 

でも 違います !

 

再就職手当の基本手当日額には上限があるのです。

 

 

再就職手当の基本手当日額の上限

60歳未満 : 6,190円
60歳以上65歳未満 : 5,004円
(毎年8月1日以降に見直されます)

出典
ハローワークインターネットサービス

 

今回のケースは60歳以上なので、基本手当日額は5,004円が上限となります。

 

では再就職手当の額を算出してみましょう。

 

この場合、65歳未満で勤続年数、つまり雇用保険加入年数が20年以上ありますから、失業保険の受給日数は150日間。

 

再就職まで50日間受給したので残日数は100日間となり、150日の3分の2となるので再就職手当の支給率は70%

 

再就職手当支給額

= 基本手当日額 x支給残日数 x支給率

= 5,004円 x 100 x 70%

= 350,280円

 

なお、再就職手当をもらえる条件や申請方法についてもっと詳しく知りたい方はこちらで解説していますよ。
再就職手当がもらえない !? もらえる条件と手順を完全解説

 

 

一方、高年齢再就職給付金はこの場合失業保険の支給残日数が100日以上、200日未満なので1年間です。

 

再就職後の賃金の低下率が

210,000円÷300,000円 = 0.7なので

 

支給率は60再就職後の給料の4.67%となり、

 

支給額

= 210,000 x 4.67%

= 9,807円/月

 

再就職後の給料 210,000円と足しても210,000円+ 9,807円 = 219,807円です、上限の360,584円未満ですから減額はありません。

 

そこで、1年間の総支給額は

 

9,807円/月 x 12ヵ月 = 117,684円

 

この場合は再就職手当の方が断然お得となります。

 

とは言え、それぞれのケースで異なりますからどちらが得かは一概には言えません。

もう一つのケースを見てみましょう

 

ケース2 : 再雇用後の給料が60歳時の給料の6割になった場合

 

試算条件2

・退職時の給料(月額)  350,000円
・年齢 60歳
・退職時の勤続年数 25年
・失業保険受給済み日数 50日間
・再雇用後の給料 210,000円

 

 

退職時の給料が高くても再就職手当は上限がありますから、受給額は変わりません。

 

再就職手当 = 5,004 × 100日 × 70% = 350,280円

 

一方高年齢再就職給付金は、次のようになります。

 

再就職後の賃金の低下率が

210,000円÷350,000円 = 0.6なので

支給率は60再就職後の給料の15%となり、

 

支給額

= 210,000 x 15%

= 31,500/月

 

再就職後の給料 210,000円と足しても210,000円+ 31,500円 = 241,500円で、上限の360,584円未満ですから減額はありません。

 

そこで、1年間の総支給額は

31,500円/月 x 12ヵ月 = 378,000円

となり、再就職手当よりも多くもらえることとなります。

 

60歳の時の給料と、再就職後の給料の低下率、そして失業保険の支給残日数によって異なってきます。

 

さらに在職老齢年金を受給する場合は支給停止額も考慮しなければなりません。

 

ご自分の場合はどちらが得か、上の例のように実際にシミュレーションしてましょう。

 

再就職手当と高年齢再就職給付金の具体的な額についてはハローワークに問い合わせてみると良いですよ。

 

再就職手当と高年齢再就職給付金の違い

再就職手当と高年齢再就職給付金、いずれも失業保険(雇用保険の基本手当)をもらって求職活動をして再就職した人が対象となる手当です。

 

ここでは再就職手当と高年齢再就職給付金の違いを分かりやすいように表にしておきますね。

 

再就職手当高年齢再就職給付金
年齢制限なし60歳以上
失業手当の残日数所定給付日数の3分の1以上あること100日以上あること
金額基本手当日額 x支給残日数 x支給率(60%又は70%)

基本手当日額に上限あり(※)

最大で再雇用後の賃金の15%
支給期間一括払い支給残日数が
・200日以上は2年間
・100日以上は1年間
但し65歳まで
申請期限再就職から1ヵ月以内原則支給対象月の初日から起算して4か月以内だが2年以内は申請可

※就職時年齢が60歳未満は6,190円、60歳以上65歳未満は5,004円

 

おわりに

いかがでしたか ?

 

定年退職後に失業保険をもらい、さらに再就職した場合は「高年齢再就職給付金」か「再就職手当」のいずれかを受けることができます。

 

この2つを具体的な例を挙げて比較してお見せしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?

 

ご自分が再就職される際はどちらがお得か、ぜひシミュレーションしてみてください。

 

最後までお読みくださってありがとうございました。