年金を払えない時どうしたらいいでしょう ?
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人で、厚生年金保険や共済組合に加入していない場合は国民年金への加入が義務づけられています。
でも、就職できなかったとか、失業してしまったとかで、国民年金の保険料を払えないと、将来年金を受け取れないという事態になり兼ねません。
年金を払えない時の対処法には「免除」と「猶予」の申請があります。
ここでは、年金を払えないときの対処法として、免除や猶予の条件と注意点についてお伝えしてゆきます。
その前に、年金を払わないとどうなるかを確認しておきましょう。
年金を払わないとどうなるか
将来年金を受け取るためには、年金の保険料を10年以上支払う必要があります。
そして、年金を払わないと次の4つの問題が生じます。
・65歳になっても老齢基礎年金が受けられないまたは額が少なくなる
・万一障害者となっても障害基礎年金が受けられない
・亡くなったあと配偶者や子が遺族基礎年金を受けられない
・財産を差し押さえされる可能性がある
ちなみに、厚生労働省と日本年金機構の調査では、2018(平成30)年度に年金保険利用を払わなかった人は公的年金加入対象者の約2%に当たる157万人が未納(24ヵ月払っていない)だったそうです。
そして、財産を差し押さえられた人は2017(平成29)年では14,000人超に上っています。
ですから、払わないと良いことはないのです。
そうは言っても年金を払えない時はどうしたら良いのか ?
年金を払えない時の対処法
年金を払えない時の対処法としては次の2つがあります。
・免除を申請する
・猶予を申請する
似ているようですが、免除と猶予には違いがあります。
いずれも、国民年金が「未納」にならずに済むための方法ですが、次の点が異なっています。
免除は保険料の一部または全額を払わなくても良いが猶予は後で払う必要がある
という点です。
そして、大事なメリットは、
免除も猶予も受給資格期間に参入される
と言うこと。
つまり、免除または猶予を受けることで、今年金を払えなくても払っていた期間として認められるので、将来年金を受けるために必要な、10年の受給資格期間が達成されやすくなるということです。
それではいよいよ「免除」と「猶予」の条件と注意点を見てゆきましょう。
免除の条件と注意点
初めに免除の条件と注意点を確認しましょう。
免除の条件
免除の条件は年齢と所得です。
所得は、本人・配偶者のほか、世帯主の所得も審査基準の対象となります。
審査項目 | 条件 |
対象者年齢 | 20歳以上60歳未満 |
所得基準 | 本人・配偶者および世帯主の所得 |
本人・配偶者および世帯主の所得によって免除は4種類に分けられます。
免除の種類 | 所得基準(前年度所得が下記未満であること) |
全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 |
4分の3免除 | 78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
半額免除 | 118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
4分の1免除 | 158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
免除の注意点
免除を受けることで、その期間については将来受け取る年金の額が免除の割合に応じて少なくなります。
免除の種類 | 受け取れる年金額 |
全額免除 | 本来の年金の2分の1 |
4分の3免除 | 本来の年金の8分の5 |
半額免除 | 本来の年金の8分の6 |
4分の1免除 | 本来の年金の8分の7 |
たとえば、2年間全額免除をうけたとすると、2年の間は受け取れる年金額が本来額の半分になります。
じつは残りの半額の部分は免除の間、国が保険料を支払ってくれていたのです。
もう一つ、学生さんは免除を受けることはできません。
その代わり「学生納付特例制度」という保険料の納付が猶予される制度を利用できますよ。
なお、免除しても各月ごとに10年以内であれば追納が認められます。
追納によって、将来受け取る年金額の減少を抑えることができます。
さらに、追納した分は社会保険料控除となるので、所得税・住民税が軽減されるというメリットがあります。
ですから、追納できるようになったら放っておかないで、ぜひとも追納することをおすすめします。
また、免除された期間は保険料納付済期間として参入されます。
まんいち障害者になってしまったときの障害者年金、配偶者がいる場合の遺族年金の受給条件である「国民年金の加入期間のうち保険料納付済期間が3分の2以上あること」を満たしやすくなのです。
猶予の条件と注意点
では次に猶予の条件と注意点を確認しましょう。
猶予の条件
猶予の条件は年齢と所得です。
所得基準は、本人・配偶者の所得のみとなります。
審査項目 | 条件 |
対象者年齢 | 20歳以上50歳未満 |
所得基準 | 本人・配偶者の所得のみで判断 |
猶予の所得条件
前年度の所得によって審査されます。
扶養の有無 | 前年度の所得 |
扶養家族がいる場合 | (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 以内であること |
扶養家族がいない場合 | 35万円+22万円 = 57万円 以内であること |
条件とされるのは「所得」で、「収入」ではありません。
会社勤めの人なら給料、アルバイトの方ならバイト料が「収入」となります。
そこから必要経費つまり「所得控除」を引いたものが「所得」です。
上の表で所得が57万円なら収入に換算すると122万円となります。
卒業したけど就職できなかった人が、学生時代のアルバイト収入が122万円以上あると「猶予」してもらえないことになります。
猶予の注意点
猶予の注意点は、後でちゃんと払わないと「未納」となってしまうことです。
猶予期間は各月ごとに10年間で、10年を過ぎた分は後から払うことはできません。
払えるようになったら忘れずに払いましょうね。
年金の免除と猶予の申請先は ?
年金の免除や猶予の申請先は、住民票のある市区町村役場の国民年金担当窓口です。
「国民年金保険料免除 ・ 納付猶予申請書」を提出します。
申請書は日本年金機構の国民年金関係届書・申請書一覧からダウンロードできますよ。
手続きに必要なものは
申請書には次の書類を添付します。
・個人番号(マイナンバー)カード等か年金手帳又は納付書(基礎年金番号のわかるもの)
・印かん(認印)
・市税事務所などが発行する「所得証明書」
所得が57万円未満の場合は、免除等申請書の「前年所得」欄に「なし」と記入することで、「所得証明書」の添付を省略することができます。
また、他の市区町村から転入した場合は、前年の所得状況を証明するものとして、源泉徴収票などを求められることがあります。
さらに、失業が理由の場合は、下記のいずれかの書類も必要です。
・雇用保険受給資格者証の写し
・雇用保険被保険者資格喪失確認通知書の写し
・雇用保険被保険者離職票の写し
おわりに
いかがでしたか ?
年金を払えない時の対処法として、免除と猶予についてその条件と注意点をお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?
長い人生には年金を払えない時もあるかも知れません。
そんなときは「未納」のままにしないで、免除や猶予の制度を利用してしのいでください。
そうすれば、デメリットを最小限に抑えることができます。
そして余裕ができたら「追納」することをおすすめします。
少しでも多くの年金がもらえますように !
最後までお読みくださってありがとうございました。