特別支給の老齢厚生年金って知っていますか ?
65歳前にもらえる年金のことです。
でも、年金を早くもらうと後でもらえる年金が減額されるのでは・・・?
そう勘違いしている方がけっこういらっしゃるようです。
特別支給の老齢厚生年金は年金の繰り上げ受給とは違います。
もらったからといって後で年金が減額されることはありません。
でも、黙っていてはもらえません。
申請が必要です。
ただし、収入制限があるので、申請してももらえない人もいます。
いずれは申請するのですから、特別支給の老齢厚生年金を65歳前で申請しておいて損をすることはありません。
そして、年金の時効は5年間です。
もしも特別支給の老齢厚生年金をもらえる条件を満たしているのに、申請しないまま5年間放置してしまったら、せっかくの権利を放棄したことになってしまいます。
ですから、絶対に申請した方が良いのです。
はじめにこの記事で分ることをまとめておきますね。
・請求してもデメリットはない
・もらっても後で年金が減額されることはない
・もらえる人は生年月日による
・60歳以上65歳前までもらえる
・在職していれば収入制限が適用されることもある
・5年で時効となり請求できなくなる
・繰り下げ受給はできない
ここでは、特別支給の老齢厚生年金とは何か、そしてその収入制限について詳しく解説しています。
特別支給の老齢厚生年金とは
60歳以降65歳前に支給される老齢厚生年金を特別支給の老齢厚生年金と言います。
現在、年金の支給は65歳からですが、昭和60年の法律改正以前は支給開始年齢が60歳でした。
そこで、支給開始年齢を段階的に引き上げる措置として、65歳前に支給する年金として制度化されたのが「特別支給の老齢厚生年金」なのです。
そして「特別支給の老齢厚生年金」は、支給開始の年齢が生年月日に応じて異なります。
では、受給条件を詳しく見てゆきましょう。
受給条件
「特別支給の老齢厚生年金」の受給条件は次の通りです。
・満60歳以上であること
・老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上あること
・厚生年金保険等に1年以上加入していたこと
・男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと
・女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと
出展 : 下記を参考に記載
老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上で、かつ厚生年金保険等の加入期間が1年以上とはどういうことでしょう。
用語の定義をしっかり理解していないと少し分かりにくいですね。
老齢基礎年金は、会社勤めをしていない人も含めてすべての人が受け取れる年金で、受給資格期間は、国民年金や厚生年金保険など保険料を納めた期間によって決まります。
この期間が10年以上あるということです。
老齢厚生年金は、会社に勤めて厚生年金保険に加入していた人や共済組合に加入していた人が受け取る年金で、この加入期間が1年以上ということです。
申請手続き
年金ダイアルに電話して、特別支給の老齢年金を請求したいことを伝えれば手続きの案内が郵送されてきます。
必要事項を記入して添付書類を添えて年金事務所に送ればよいのです。
記入の注意点や添付書類等についてはこちらに詳しくまとめてありますのでご参照ください。
特別支給の老齢厚生年金の手続きと必要書類を徹底解説 !
いくらもらえる
特別支給の老齢厚生年金はいくら貰えるのか?
気になりますよね。
「年金定期便」に記載されています。
下の図の赤枠部分です。
日本年金機構のねんきんネットでも同じ情報を見ることができますよ。
自分でも計算できるのですが、面倒ですのでここでは触れないでおきます。
特別支給の老齢厚生年金の収入制限
特別支給の老齢厚生年金は、働きながらもらうことができます。
でも、収入によっては一部、または全部が支給停止になることがあります。
働きながら受ける年金を在職老齢年金と言います。
では、特別支給の老齢厚生年金を在職老齢年金としてもらう場合は、収入がいくら以上だと支給停止になるのでしょう ?
・47万円の壁がある。
後ほど詳しくご説明します。
そして、特別支給の老齢厚生年金の収入制限の判断基準となるのは次の2つです。
・基本月額 : 年金の月額
・総報酬月額相当額 : 給料の月額
この2つが分からないと、収入制限に該当するかどうか判断できませんので、初めにしっかり押さえておきましょう。
基本月額
・年金の年額を12で割った額
総報酬月額相当額
・毎月の賃金(標準報酬月額) +(1年間の賞与)を12で割った額
標準報酬月額は給料の等級みたいなものです。
例えば月給が350,000円以上370,000円未満なら標準報酬月額は360,000円となります。
ご自分の標準報酬月額は、こちらで確認できますよ。
ここでは次のように仮定して見てゆきますね。
(例)
・特別支給の老齢厚生年金の額 : 864,000円
・標準報酬月額 : 360,000円
・年間賞与 : 1,200,000円
基本月額は、特別支給の老齢厚生年金の年額(864,000円)から、
基本月額
=864,000円÷12
=72,000円
総報酬月額相当額は、標準報酬月額(360,000円)と年間賞与(1,200,000円)から、
総報酬月額相当額
=360,000円+1,200,000円÷12
=360,000円+100,000円
=460,000円
以上から
基本月額 + 総報酬月額相当額
= 72,000円 + 460,000円
= 532,000円
上で仮定した例の基本月額と総報酬月額相当額が算出できたところで、いよいよ特別支給の老齢厚生年金の収入制限を確認することとしましょう。
支給停止条件~47万円の壁とは ?
特別支給の老齢厚生年金を在職老齢年金としてもらう場合の支給停止条件は次の通りで、47万円が壁となります。
表にしておきますね。
基本月額と総報酬月額相当額のパターン | 支給停止額(月額) | |
① | 基本月額+総報酬月額相当額≦47万円 | 支給停止額=0円(つまり全額支給) |
② | 基本月額+総報酬月額相当額>47万円 | 支給停止額
=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×0.5 |
仮定した例では、基本月額+総報酬月額相当額が532,000円ですから、上の表の②に該当しますので、支給停止額は次のようになります。
支給停止額(月額)
=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×0.5
=(532,000円-470,000円)×0.5
=31,000円
年額にすると
31,000円/月×12ヵ月 = 372,000円
が支給停止となります。
特別支給の老齢厚生年金の年額 864,000円のうち、372,000円が支給停止額されるので、特別支給の老齢厚生年金は、1年あたり、
864,000円-372,000円=492,000円
もらえることになります。
これが60歳から64歳までもらえますので、この例では総額
492,000円/年×4年=1,968,000円
もらえることになります。
65歳になったら
65歳になれば、もはや特別支給の老齢厚生年金はもらえません。
そのかわり、普通に老齢厚生年金が支給されるようになります。
ただし、こちらも働いていれば在職老齢年金として、収入に応じて減額(支給停止)されることがあります。
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下なら支給停止はありません。
在職老齢年金の支給停止とその解除についてはこちらに詳しくまとめましたのでよろしければご参照ください。
在職老齢年金~支給停止の解除はいつから ? 額の計算も解説。
特別支給の老齢厚生年金は繰り下げ受給できるか ?
冒頭、特別支給の老齢厚生年金は、年金の繰り上げ受給ではないので将来の年金が減額されることはないとお伝えしました。
では、特別支給の老齢厚生年金を繰り下げ受給することはできるでしょうか?
年金は繰下げ受給すると1ヵ月当たり0.7%増額されますから、仮に1年間繰り下げると、
0.7%/月 × 12ヵ月 = 8.4%
の増額となります。
特別支給の老齢厚生年金を繰り下げることで後で増額してもらいたい。
そう考える人もいます。
でも、特別支給の老齢厚生年金は繰り下げ受給することはできません。
老齢基礎年金や老齢厚生年金とは性質の異なる、というか別ものなのです。
もしも繰り下げ可能と勘違いして受給しないと冒頭述べたように5年間で時効となって受け取れなくなってしまいますからお気を付けくださいね。
特別支給の老齢厚生年金の47万円の壁はいつから ?
じつは、2022(令和4)年3月まで支給停止条件は
基本月額 + 総報酬月額相当額 > 28万円
と今より厳しいものでした。
しかし法改正により、2022(令和4)年4月からは
基本月額 + 総報酬月額相当額 > 47万円
に緩和されたのです。
おわりに
いかがでしたか ?
特別支給の老齢厚生年金を申請すれば得をすることはあっても損をすることはないということがお分かり頂けたと思います。
生年月日の制限がありますが、あなたがもし昭和36年4月1日以前に生まれた男性、または昭和41年4月1日以前に生まれた女性なせ、是非特別支給の老齢厚生年金を申請してみてください。
最後までお読みくださってありがとうございました。