内定の口約束は有効でしょうか ?
中小企業で社長面接の際に
「ぜひ当社に来てください。」
「××月1日からお願いします。」
と言われて、
「ありがとうございます !」
「宜しくお願い致します。」
と言うことはしばしばありがちなことです。
特に中途採用の場合に多く見受けられます。
なかなか内定がもらえずに焦っているときには、口頭でも「内定」という言葉はうれしく、有難いものです。
でも、この場合、2つのリスクがあります。
・後日内定が取り消されることがある
・入社したら聞いていた条件と違うことがある
ここでは内定の口約束は有効なのか、また、書面でもらえない時はどうすべきなのかについてお伝えしてゆきます。
内定の口約束は有効か~法律は ?
内定の口約束は法的には有効です。
完全に効力があります。
民法第522条第2項に契約の成立には「書面の作成を要しない」旨が明記されています。
1項 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2項 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
参照元
e-gov法令検索
ところがです。
内定の口約束は証拠がないのでどうにもならない
のです。
いくら「口約束でも法的には有効」と言っても、証拠がありません。
「いや、それは間違いです。勘違いされているのでしょう。」
と言われたらそれまでなのです。
では、内定を口約束された時はどうしたらよいか ?
次の章でご説明します。
内定が口約束ならどうしたらいい ?
内定が口約束の場合は書面でもらえるよう依頼してください。
内定を伝えられたらすかさず次のように返します。
「ありがとうございます !」
「宜しくお願い致します。」
「内定と労働条件については『書面』で頂けますでしょうか ?」
特に労働条件は大事です。
詳しくご説明しましょう。
書面で内定通知書と労働条件通知書をもらう
じつは、企業側には内定通知書を発行する法的義務はありません。
口頭でも法的には問題はないのです。
でも、いったん内定通知書を出して、応募者が内定承諾書を提出すると、ここに労働契約が成立します。
企業側が一方的に破棄することはできなくなるのです。
しかし、内定通知書がないと、後で
「申し訳ないがもっと良い人が見つかったので内定はなかったことにしてください。」
と言われてもどうにもなりません。
また、労働条件提示書がないと、入社した後で
・残業代が付かない
・休日出勤が普通
・賞与が出ない
など思いもつかないことが起こりえます。
面接のときには
「賞与は年間4ヵ月くらいです。」
と言われて入社したところ、賞与が出ないので聞いてみたら
「それは業績がいいときの話で現在は出せる状況ではないです。」
と簡単に言われてしまうなんてこともあるのです。
もっとも賞与は入社して半年は出ないのが普通ですから、例えば4月に入社したら夏の賞与はなしで、冬の賞与から支給されるのが一般的です。
そもそも労働条件提示書は「内定」までに提示しなければならないのものなのです。
労働基準法第15条および労働準法施行規則第5条の規定により使用者は必ず労働条件通知書を労働者に交付することが義務付けられています。
ということで、「労働条件提示書」は必須です。
自分の雇用条件を確認せずに入社するのは危険ですから、ぜひともお気を付けくださいね。
労働条件提示書に記載されることは
ここで、「労働条件通知書」に記載されるべき項目を見ておきましょう。
労働条件通知書には、次の事項が記載されます。
・契約期間
・入社予定日
・試用期間
・勤務地 / 配属先
・従事すべき業務の内容
・就業時間
・休日休暇
・賃金
・諸手当
・社会保険
・退職事由
これらを確認して納得した上で「内定承諾」をするものです。
内定通知や労働条件を書面でもらえない時は ?
社長のほかは従業員がほとんどいない会社なら、まれに社長の知識不足で内定通知や労働条件を書面で提示しなければならないことを知らないとうこともあり得ます。
その場合は
「労働条件に関しては書面で提示することが法律で定められていますから、お願いします。」
と言って教えてあげましょう。
そうでない場合で書面の提示を渋るようなら「ブラック」と見た方が良いです。
内定通知や労働条件を書面で提示されないなら内定を辞退する
ことです。
身を守るためにはあいまいなまま入社しないことが絶対条件と思ってください。
おわりに
いかがでしたか ?
内定の口約束は有効なのか、書面でもらえない時はどうすべきなのかについてお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?
特に、労働条件通知書の提示は法律で定められたことです。
それができない会社は「危険」と思った方が良いです。
なかなか内定がもらえなくても、後で後悔しないように十分にご注意くださいね。
最後までお読みくださってありがとうございました。