年金暮らしでも税金はかかるのか ?
年金で細々と暮らしてゆかなければならないのに税金取るのかよ !
腹立たしい(プンプン)。
と思いますよね。
でも住民税と所得税は年金暮らしをしている人にもかかるのです。
ただし、かからない人もいます。
ここでは年金暮らしでかかる税金として、住民税と所得税について課税の有無と、課税される場合はどれくらいかかるのかについて解説してゆきます。
年金暮らしで住民税がかかる人とかからない人
年金暮らしの場合、住民税がかかる人とかからない人がいます。
どんな人が課税されて、どんな人が課税されないのか ?
その前に、まず住民税の構造を知っておきましょう。
住民税の構造
住民税は市区町村・都道府県の行政サービスのためにかかる税金で、つぎの2つから構成されています。
住民税=均等割+所得割
・均等割 : 前年の所得金額にかかわらず割り当てられる税金
・所得割 : 前年の所得金額と所得控除額をもとに計算される税金
ここで、「所得」と「収入」の違いを確認しておきましょう。
所得とは、収入から社会保険料などの所得控除額を差し引いた額、つまり課税対象額を言います
所得 = 収入-所得控除額
それでは住民税のかかる人とかからない人を見てゆきましょう。
課税されない人
次の人には住民税が課税されません。
・生活保護法による生活扶助を受けている人
・障害者、未成年者、寡婦(寡夫)で、前年の合計所得金額が125万円以下の人(給与所得204万4千円未満の人)
これは地域によらずどこでも同じです。
でも、上記以外の人については、都道府県・市区町村によって課税の基準が若干異なることがあります。
住民税は一律ではなく、都道府県・市区町村が定めているからです。
たとえば、京都市・札幌市を例にとると住民税がかからない人の基準は次のようになります。
A 均等割・所得割ともに 課税されない人 |
前年の合計所得金額が次の額以下の人
・扶養家族のない人 35万円 ・扶養家族のある人 35万円×家族数(本人+控除対象配偶者+扶養家族数)+21万円 |
B 所得割が課税されない人 | 前年の総所得金額等の合計額が次の額以下の人
・扶養家族のない人 35万円 ・扶養家族のある人 35万円×家族数(本人+控除対象配偶者+扶養家族数)+32万円 |
出展 : 下記を参考にまとめました。
京都市 市府民税が課税されない人
上の表では「合計所得金額」と「総所得金額等の合計額」があって紛らわしいですね。
「合計所得金額 」とは、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額を言います。
一方、「総所得金額等の合計額」とは、合計所得金額から繰越控除額(前年度に控除しきれなかった額)を控除した額を言いますよ。
[住民税がかからない例]
たとえば、扶養する妻と二人暮らしの人を例にするなら、表のAから
35万円×(1+1)+21万円=91万円
年金所得が91万円以下なら住民税はかかりません。
また、表のBから、
35万円×(1+1)+32万円=102万円
年金所得が102万円以下なら住民税のうち所得割はかからず、均等割りのみとなります。
住民税のほとんどは所得割ですから、実質的に住民税はごくわずかとなります。
具体的にいくらかかるかについては、次の章でご説明しますね。
なお、住民税がかかるかどうかの基準は、既に述べたように地域によって若干の違いがあります。
お住いの市区町村のホームページか、役場に問い合わせて確認してください。
課税される場合の額は ?
住民税は、都道府県や市区町村によって多少の違いがあります。
でも、ほとんどの地域では次のようになっています。
所得割 = 前年度所得の10%
均等割 = 年額5,000円程度
年金も「雑所得」となりますから、この基準で住民税が課税されますよ。
ここで注意することは、「年金収入=所得」ではないということです。
年金収入を所得に換算してから税率を乗じる必要があります・
住民税は特別徴収される
じつは、基礎年金の年額が18万円を超える場合は、住民税があらかじめ年金から差し引かれて振り込まれます。
ここで言う年金の額は「所得に換算した額」ではなく収入としての「年金額」ですよ(念のため)。
これを特別徴収と言い、市区町村からの年金機構への依頼によって行われます。
住民税のほかにも、次のものが特別徴収されますので覚えておいてください。
・国民健康保険料(注)
・介護保険料
・後期高齢者医療制度の保険料(75歳以上)
(注)「国民健康保険料」は、市区町村によっては「国民健康保険税」としているところもあります。
年金にも所得税がかかる
さらに、年金からしっかり所得税が引かれる人がいます。
そして、課税されるかどうかは年齢と受け取る年金の額によって異なっています。
具体的に見ておきましょう。
その前に所得税の計算方法を示しますね。
所得税=(年金収入-公的年金控除額-基礎控除)×税率
税率は5.105%です(2021年現在)。
ちなみに5.105%は、所得税率 5%に復興特別所得税率 1.021%を乗じたものです。
年金以外の収入が20万円以上ある人はそちらにも課税されますので確定申告が必要となります。
年金から所得税が引かれる人
年金から所得税を引かれるのは次の人たちです。
年金から所得税が引かれる人
65歳未満 | 108万円以上の老齢厚生年金、老齢基礎年金を受け取っている人 |
65歳以上 | 158万円以上の老齢厚生年金、老齢基礎年金を受け取っている人 |
これは65歳未満と65歳以上では公的年金控除の額が異なるからです。
所得税の対象となる額は上で見たように
収入-公的年金控除額-基礎控除
でしたね。
公的年金控除額と基礎控除の合計が65歳未満と65歳以上ではそれぞれ108万円と158万円ということです。
65歳未満:公的年金控除60万+基礎控除48万=108万円
65歳以上:公的年金控除110万+基礎控除48万=158万円
ただし、
遺族年金、障害年金および死亡一時金は非課税所得なので、課税の対象にはなりません。
では、いったい年金にかかる所得税はいくらになるでしょうか ?
具体的に例をあげてご説明しますね。
年金に掛かる税金の額
年金に掛かる税金の額は、「公的年金の雑所得への換算額」に5.105%を乗じた額となります(2020年現在)。
ちなみに5.105%は、所得税率 5%に復興特別所得税率 1.021%を乗じたものです。
年金の雑所得への換算は次の表のとおりです。
65歳以上の方が優遇されていることが分かりますね。
年金受給者の年齢 | 公的年金等の収入金額 | 公的年金等に係る雑所得の金額 |
65歳未満 | 60万円以下 | 0円 |
60万円超130万円未満 | 収入金額×1.00-60万円 | |
130万円超410万円未満 | 収入金額×0.75-27万5千円 | |
410万円超770万円未満 | 収入金額×0.85-68万5千円 | |
770万円超1,000万円未満 | 収入金額×0.95-145万5千円 | |
1,000万円以 | 収入金額-195万5千円 | |
65歳以上 | 110万円以下 | 0円 |
110万円超330万円未満 | 収入金額×1.00-110万円 | |
330万円超410万円未満 | 収入金額×0.75-27万5千円 | |
410万円超770万円未満 | 収入金額×0.85-68万5千円 | |
770万円超1,000万円未満 | 収入金額×0.95-145万5千円 | |
1,000万円以 | 収入金額-195万5千円 |
注 : 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が1,000万円以下である場合の表です。
出典 : 国税庁
公的年金等に係る雑所得の速算表
[年金生活者の所得税の例]
例として年金を65歳で年額1,800,000円受け取る人なら、
公的年金の雑所得への換算額=1,800,000円×1.00-1,100,000円=700,000円
所得税=700,000円×5.105%=36,050円
これが1年間でかかる所得税です。
1ヵ月当たりおよそ3,000円、2ヵ月毎の年金の支給の際に6,000円ほどが源泉徴収されて、つまりあらかじめ差し引かれて振り込まれることになります。
「扶養親族等申告書」も忘れずに
年金生活者にも配偶者控除や基礎控除があります。
会社勤めのときは年末調整がありましたが、勤めを辞めると年末調整がありません。
年末調整では次の書類を会社に提出していたことを覚えていますよね。
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の基礎控除申告書 兼給与所得者の配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
これらの代わりに提出するのが「扶養親族等申告書」です。
年金から所得税を源泉徴収されている人に、毎年11月頃日本年金機構から郵送されてきます。
申告書を提出すると、申告書の内容に従って配偶者控除や基礎控除などが適用された上で、先ほど述べた5.105%(復興特別所得税含む)の所得税が年金から源泉徴収されます。
「扶養親族等申告書」を提出しないと所得税の対象となる「所得」そのものが大きく見られてしまうことがあるので忘れずに提出しましょう。
確定申告をした方が良い場合
じつは、年金の所得計算の際に控除されるものはまだあるのです。
例えば次のものがあげられます。
・災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)
・医療費を支払ったとき(医療費控除)
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・ふるさと納税(寄付金控除)
参考 : 国税庁
所得金額から差し引かれる金額(所得控除)
より抜粋
これらは、確定申告をすることで払い過ぎた税金が戻ってくる可能性があります。
ほかにもマイホームのリフォームなど、税金が戻る材料は結構あるものですよ。
詳しくはこちらにまとめてありますので、ぜひご参照ください。
確定申告不要制度とは?
上で述べた控除の材料がない場合でも次のいずれかに当てはまる人は確定申告の必要があります。
・公的年金等(注1)の収入金額の合計額が400万円を超える人
・公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(注2)が20万円を超える人
逆に言えば控除の材料がなく、かつ次の条件をどちらも満たしている人は、確定申告の必要はないと言うことです。
・公的年金等の収入の合計額が400万円以下で、その全部が源泉徴収の対象となる
・公的年金等の雑所得以外の所得金額が20万円以下である
これを「確定申告不要制度」と言います。
注1 : 国民年金や厚生年金、共済組合の老齢年金、確定給付企業年金 など
注2 : 給与所得、生命保険の満期返戻金、生命保険や共済などの個人年金 など
おわりに
いかがでしたか ?
年金暮らしでも課税される住民税と所得税についてお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?
いろいろ差し引かれるものがあるので、年金暮らしも楽でありませんね。
あなたの老後が穏やかでありますように。
最後までお読みくださいまして有難うございました。