副業していても失業保険はもらえるでしょうか?
2つのケースがあります。
- 副業で起業して本業を退職した場合
- 本業のほかにアルバイトなどをしていて本業を退職した場合
副業で起業している場合は本業を退職しても失業保険はもらえません。
本業のほかにアルバイトなどをしていて本業で退職した場合は、失業保険をもらえるケースともらえないケースがあります。
はじめに副業と失業保険の関係をまとめておきますね。
・退職前に個人事業主となれば失業保険をもらえない
・退職後に個人事業主になる場合は再就職手当をもらうことができる
・週20時間以上働くと失業保険をもらえない
・週20時間未満でも
「1日4時間以上」の日は失業保険は貰えない
「1日4時間未満」の日は収入によって失業保険は満額支給又は減額される
ここでは副業をしている人が失業保険をもらえる条件、どんなときにもらえないかについて詳しく解説してゆきます。
なお、ここでいう「失業保険」とは雇用保険の基本手当を指します。
副業で起業した場合の失業保険
副業で起業する場合、失業保険との関係は2パターンあります。
- 失業保険をもらいきってから起業する
- 失業保険をもらい始めてから起業する
ご説明しましょう。
退職前に個人事業主となれば失業保険をもらえない
冒頭述べたように、副業で起業して個人事業主となっていれば主たる収入源である雇用先を退職しても失業保険はもらえません。
たとえ収入が0でも個人事業主は、事業をやっている以上失業とは認められないからです。
ですから、起業して個人事業主になるのは失業保険をもらい切ってからの方がお得と言えるでしょう。
個人事業主の廃業届を出すことで失業保険をもらえるようになります。
ただし、廃業届を出したあとで事業を続けながら失業保険をもらうと「不正受給」になってしまいます。
もしも不正受給がバレて悪質と判断されれば、もらった失業保険の3倍の額を返さなければなりませんので、決してやってはいけませんよ。
失業保険をもらい切ってから起業する方がお得と述べましたが、そこまで待たずに起業したい場合は再就職手当をもらうという手があります。
続いてご説明しますね。
退職後に個人事業主になる場合は再就職手当をもらうことができる
本業の会社を退職した後、失業保険をもらっている状態で副業で起業した場合、つまり個人事業主になった場合は、再就職手当をもらうことができます。
起業も再就職とみなされるからです。
ただし、条件があります。
①受給手続き後、7日間の待期期間満了後に起業したこと
②基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
③過去3年以内に、再就職手当又は常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと。
出典
再就職手当のご案内
厚生労働省
より個人事業主に関する部分を転記
再就職手当の受給額は、失業保険をもらってから起業して個人事業主になるまでの期間によって、つまり基本手当の支給残日数によって異なります。
支給日数を所定給付日数の 3分の2以上残して起業した場合
・・・・・基本手当の支給残日数の60%の額
3分の1以上残して起業した場合
・・・・・基本手当の支給残日数の50%の額
再就職手当の受給額は、早く起業した方が多くもらえることになります。
当然ですが、その前に失業保険の受給を開始しておくことが必要ですよ。
本業のほかにアルバイトなどの副業をしていて本業を退職した場合
本業のほかにアルバイトなどをしていて本業を退職した場合は勤務時間によって次の3つのケースに分かれます。
- 週20時間以上働くと失業保険をもらえない
- 週20時間未満の場合で失業保険が減額されるケース
- 週20時間未満の場合で失業保険全額支給のケース
週20時間以上働いていると失業保険をもらえない
アルバイトなど副業で週20時間以上働いていると失業保険をもらうことはできません。
理由は、雇用保険に加入できる条件が週20時間以上と定められているので、失業状態と認められないからです。
週20時間未満の場合は満額・減額・もらえないの3パターン
週20時間未満の場合でも、1日4時間以上働くとその日の分は失業保険をもらうことはできません。
1日4時間未満の就労の場合、失業保険は次の規則に従って減額されます。
失業保険の基本手当日額から減額される額
・失業保険の基本手当日額と副業の収入の合計額が離職時賃金日額の80%を超えた額
式にすると次のようになります。
減額幅
=(4時間未満の賃金/4時間未満の労働日数-内職控除額+基本手当日額)-賃金日額×0.8
従ってもらえる額は、
もらえる失業保険の額
=基本手当日額-減額幅
ここで上の式で使われている用語について解説しておきますね。
用語解説
用語 | 意味 | 備考 |
基本手当日額 | 失業保険(基本手当)の日額 | 雇用保険受給資格者証の19の欄に記載された額(下図参照) |
副業の収入 | 4時間未満の就労によって得た賃金の合計を就労日数で割った値 | |
内職控除額 | 1,310円(令和4年8月1日~) | 毎年8月1日に変更になる |
賃金日額 | 賃金日額とは、離職した日の直前6ヵ月に受けた賃金の総額を180で割った1日単位の賃金額 | 雇用保険受給資格者証の14の欄に記載された額(下図参照) |
ここで「基本手当日額」とは失業手当の日額のことで、「雇用保険受給資格者証」の19の欄に記載されています。
また、「賃金日額」とは失業前6ヵ月の賃金を180で割った1日当たりの平均額のことで、「雇用保険受給資格者証」の14の欄に記載されています。
それぞれ下図の赤枠部分です。
出典
厚生労働省
雇用保険受給資格者証の見方
(氏名等を消去して赤枠追加)
式を見ても分かりにくいでね。
具体例で見てみましょう。
次のように仮定してアルバイト料による違いを見てみましょう。
基本手当日額 : 5,600円
離職時賃金日額 : 8,000円
離職時賃金日額の80% : 6,400円
控除額 : 1,310円
はじめに3つケースを一覧にしておきますね。
1日当たりの副業賃金 | 内職控除額 | 基本手当日額 | 賃金日額 | 賃金日額の80% | 基本手当日額の減額幅 | もらえる額 | 備 考 | |
1 | 9,000 | 1,310 | 5,600 | 8,000 | 6,400 | 6,890 | 0 | もらえない |
2 | 4,500 | 1,310 | 5,600 | 8,000 | 6,400 | 2,390 | 3,210 | 減額される |
3 | 2,000 | 1,310 | 5,600 | 8,000 | 6,400 | -110 | 8,000 | 満額もらえる |
ケース1
時給3,000円で1日3時間アルバイト(副業)したとしましょう。
アルバイトの1日当たりの給料は、
3,000円/時間 × 3時間/日
= 9,000円
減額幅
=(4時間未満の賃金/4時間未満の労働日数-内職控除額+基本手当日額)-賃金日額×0.8
=(9,000円 -1,310円 + 5,600円) - 8,000円 × 0.8
=13,290円 - 6,400
=6,890円
減額幅が基本手当日額の5,600円を超えていますから失業保険はもらえないということになります。
ケース2
時給1,500円で1日3時間アルバイト(副業)したとしましょう。
アルバイトの1日当たりの給料は、
1,500円/時間 × 3時間/日
= 4,500円
減額幅
=(4時間未満の賃金/4時間未満の労働日数-内職控除額+基本手当日額)-賃金日額×0.8
=(4,500円 -1,310円 + 5,600円) - 8,000円 × 0.8
=8,7990円 - 6,400
=2,390円
減額幅が基本手当日額の5,600円より小さいので差額を失業保険としてもらえることになります。
もらえる失業保険の額
=基本手当日額-減額幅
=5,600円- 2,390円
=3,210円
ケース3
時給1,000円(※)で1日2時間アルバイト(副業)したとしましょう。
※分かりやすくするため最低賃金を度外視しています。
アルバイトの1日当たりの給料は、
1,000円/時間 × 2時間/日
= 2,000円
減額幅
=(4時間未満の賃金/4時間未満の労働日数-内職控除額+基本手当日額)-賃金日額×0.8
=(2,000円 -1,310円 + 5,600円) - 8,000円 × 0.8
=6,290円 - 6,400
=-110円
減額幅がマイナスとなるので失業保険は満額の5,600円もらえることになります。
注意・アルバイトは離職後7日間してはいけない
失業保険の受給申請をした後、7日間は待機期間となり、この期間に仕事をすると、失業状態とはみなされなくなります。
ですから、アルバイトも7日間はしないこと。
とはいっても待機期間が延長となるだけで、その後受給可能となりますが・・・。
待機期間は失業状態でいなければならないのでご注意くださいね。
ただし、本業を自己都合で辞めたときの2か月間の給付制限期間中はアルバイトなど、副業しても問題ありません(既にご説明したように、収入によっては減額などがありますよ)。
副業と雇用保険の関係
冒頭、副業と失業保険の関係をまとめてお伝えしましたが、失業保険の元である雇用保険には失業保険のほかにも受けられる制度がありますので、それらと副業との関係をご紹介しておきますね。
雇用保険で受け取れるお金の主なものは次の3つです。
他にもありますが、ここでは説明を省かせて頂きます。
・基本手当(失業給付)
・傷病手当
・高年齢求職者給付金
基本手当(失業給付)
雇用保険の基本手当とは失業保険のことです。
副業と失業保険の関係は既にご説明した通りです。
傷病手当
雇用保険に加入していた人がハローワークで求職の手続き後に病気やケガによって15日以上働けない場合、支給される手当で、概要は次の通りです。
【条件】
・ハローワークで求職の手続き済みであること
・病気やケガによって15日以上働けなくなったこと
【金額】
・基本手当(失業保険)と同額
【期間】
・所定給付日数の範囲内
【申請方法】
・病気やケガが治った後の最初の認定日までに申請
・傷病手当支給申請書に受給資格者証を添えて提出(医師の診断書は不要)
この間にパートやアルバイトなどの副業を行うと「働けない」状態とはみなされなくなってしまいますから、傷病手当を受けることはできません。
もしも傷病手当を受けながら、副業を行うと不正受給になってしまいます。
その場合は後で返還だけでなく、罰則金も請求されることがあります。
また、健康保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付などの支給を受けることができる場合には、傷病手当は支給されません。
健康保険の傷病手当金と副業の関係
雇用保険の傷病手当とよく似た制度に健康保険の傷病手当金というものがあります。
これは、失業中ではなく、病気やケガなどで休職した場合に受けられる健康保険制度のひとつです。
給与の2/3を最長1年6ヵ月受けられます。
しかし、休職中にアルバイトをすると保険者から「勤務できない状態ではない」と見なされ傷病手当金が打ち切られるのが普通です。
自宅でできる少額の「内職」程度は黙認されることが多いようですが、念のため内職をするなら前もって健康保険に確認した方が無難ですよ。
【雇用保険の傷病手当】
失業してハローワークで求職申込後に病気などで端られなくなった場合に申請できる
【健康保険の傷病手当金】
在職中に病気などで休職した場合に申請できる
おわりに
いかがでしたか ?
副業しているときに失業保険はもらえるかどうかについて解説してきました。
個人事業主として起業したときと、そうでないときの違いについて、さらに副業としてのアルバイトの収入によって失業保険が満額もらえるケース、減額されるケース、そしてもらえないケースについてご説明しましたが参考になりましたでしょうか?
最後にもう一度まとめておきますね。
副業と失業保険の関係
- 退職前に個人事業主となれば失業保険をもらえない
- 退職後に個人事業主になる場合は再就職手当をもらうことができる
- 週20時間以上働くと失業保険をもらえない
- 週20時間未満でも
「1日4時間以上」の日は失業保険は貰えない
「1日4時間未満」の日は収入によって失業保険は満額支給又は減額される
最後までお読みくださって有難うございました。