失業中に病気や怪我をしてしまったらどうなるでしょう ?
失業保険は求職中であることを条件として受給することができるものです。
ですから、病気や怪我で働けない状態になったら、当然のこととして、失業保険を受けることはできなくなってしまいます。
失業したうえ、さらに病気。
「悪いことは重なる」、「泣きっ面に蜂」ですよね。
でも、救済措置があります。
じつは、失業中に病気で求職できなくなったら、
失業保険と同額の傷病手当を受けることができる
のです。
ここでは、失業中に病気になってしまったときに受けられる手当の詳細と、その申請手続きについて解説しています。
失業中に病気や怪我をした時の傷病手当とは
雇用保険の制度として、失業保険(失業手当・基本手当)のほかに傷病手当というものがあります。
失業保険は求職者を支援する制度。
一方、傷病手当は求職できなくなった人を支援する制度です。
失業保険とは、次のように区別されます。
・失業保険 : 仕事に就けない期間が14日以内の場合
・傷病手当 : 仕事に就けない期間が15日以上の場合
つまり、仕事に就けない期間が14日以内であれば、その間も失業保険を継続して支給しましょう。
でも、14日を過ぎたらさすがに失業保険を払い続けることはできないので、傷病手当に切り替えましょうと言うことです。
受給できる条件
傷病手当を受給できる条件は次の5つです。
- 失業保険の受給資格者であること
- ハローワークで求職の申し込みをしていること
- 病気や怪我によって15日以上の就労が困難であること
- 病気や怪我をしたのは求職の申し込み後であること
- 健康保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付などを受給していないこと
傷病手当は失業保険に変わるものなので、失業保険の受給資格者であることは当然の条件件ですね。
注意すべきことは、健康保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付などを受給中ではないことです。
残念ながら、これらの制度とは併用できないことになっています。
ちなみに、雇用保険の「傷病手当」と健康保険の「傷病手当金」とは別のモノです。
まぎらわしいですね。
違いについては後ほど詳しくご説明しますよ。
申請手続きは
次の2つ書類をハローワークに提出します。
1.傷病手当支給申請書
2.雇用保険受給資格者証
「傷病手当支給申請書」はハローワークでもらうか、Webからダウンロードすることもできますよ。
申請期間は、病気やけが治癒した直後の認定日までです。
でも、病気が治る前に認定日がきてしまったら・・・。
その間、傷病手当の申請はできないし、失業保険を受けられないのでは ?
はい。その通りです。
でも、なくなってしまうのではなく、失業保険はあとで受けることができますからご安心ください。
最終的に受け取れる失業保険の総額には影響しませんよ。
傷病手当支給申請書には、診療担当者の証明欄がありますから、医療機関で書いてもらう必要があります(押印も必要なので)。
額はいくら?
雇用保険の傷病手当は、冒頭述べたように失業保険の基本手当と同額です。
まさに、「求職活動できない人」のための「失業保険の代わり」ということですね。
期間はいつまで ?
雇用保険の傷病手当は、失業保険の受給日数の範囲内で受給することができます。
失業保険に変わるものなので、あくまでも失業保険の範囲内ということです。
失業保険の受給期間延長とは ?
失業保険の受給期間延長制度をご存じですか ?
やむを得ない理由によって連続30日以上仕事に就くことができない場合、失業保険の受給期間を延長することができる制度です。
働けない期間、つまり求職活動できない間は失業保険の受給を受けない代わりに、その期間分をあとで受給期間に加えることができるのです。
離職日の翌日から最長4年以内まで延長することができますよ。
なので、病気や怪我で30日以上働けない場合は、傷病手当を受けるか手当を受けずに失業保険の受給期間を延長するか、どちらかを選択することが可能となります。
どちらを選ぶかは、今切実にお金を必要としているか、あとでもらう方が助かると思うかによってご判断ください。
健康保険の傷病手当金と雇用保険の傷病手当とは別
「傷病手当」と「傷病手当金」。
名前がよく似ているので間違えやすいですね。
「傷病手当」は雇用保険の制度で、「傷病手当金」は健康保険の制度です。
失業中の人か、あるいは在職中の人か対象者が異なっています。
違いが分かるように表にしておきますね。
手当区分 | 制度 | 対象者 | 期間 | 金額 |
傷病手当 | 雇用保険 | 失業した後に、病気や怪我で働けなくなった人 | 失業保険の受給日数が限度 | 基本手当日額×需給期間 |
傷病手当金 | 健康保険 | 会社に在職中に、業務外の病気や怪我で働けなくなった人 | 受給開始から1年6ヵ月 | 標準報酬月額の3分の2 |
【金額の例】
例えば月給が25万円(諸手当込み)の人なら次のようになります(2020年7月現在のデータ)。
[傷病手当金]
標準報酬月額 = 240,000円
傷病手当金 = 240,000 ÷ 3 × 2 = 160,000円
ここで、標準報酬月額は、直近のものではなく、傷病手当金の支給開始日以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均となります。
傷病手当金についてはこちらに詳しく解説していますのであわせてどうぞ。
[傷病手当]
賃金日額 = 250,000/月 x 6ヵ月÷ 180 = 8,333円
基本手当日額 = 5,072円
受給期間が30日とすると
5,072円/日 × 30日 = 152,160円
ただし、離職時の年齢によって変わります。
なお、賃金日額から基本手当日額を算出する方法は、ここでは省略します。
詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
これは、「どちらが得か」という比較ではありません。
自分で選択できるものではありませんから。
制度の違いをご理解いただくための比較表ですよ(念のため)。
おわりに
いかがでしたか ?
失業中に病気や怪我をしてしまったとき、失業保険の変わりとなる傷病手当についてお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?
最後にまとめておきますね。
傷病手当は
・連続して15日以上働けなくなったら申請できる
・失業保険の所定給付日数の範囲内で基本手当と同額が支給される
・連続して30日以上働けなくなったら失業保険の受給期間延長も選択できる
・健保の傷病手当金とは別制度
失業中に病気や怪我に見舞われたら、心細いですよね。
傷病手当はそんな時に力になってくれる制度です。
活用できる制度は積極的に使って苦しい状況を乗り越えましょう。
最後までお読みくださってありがとうございました。