休業手当はパートやアルバイトでももらえるのか ?
「明日から当分来なくていいよ。休業してください。」
突然そう言われた。
親元を離れてアルバイトしながら学資や生活費を稼いでいる人や、子供を育てながらパートで暮らしている人にとっては「休業」は大問題です。
でも、「休業手当」というものがあります。
ここでは、「休業手当」に関する次の4つの疑問にお答えした上で、さらに詳しく解説してゆきます。
・休業手当はパートやアルバイトでももらえるのか
・休業手当はいくらもらえるのか
・休業手当はいつまでもらえるのか
・休業手当がもらえないときどうしたらいいのか
答えは次のとおりです。
・これまでの給料の60%以上
・休業期間中ずっともらえる
・労働基準監督署に連絡する
休業手当とは ?
そもそも休業手当とはどんなものなのか ?
これは、労働基準法という法律で定められた使用者、つまり会社の義務であり、労働者の権利なのです。
原文は次のとおりです。
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
ここでいう「使用者」とは会社のことです。
会社の「責」つまり都合で休業させた場合は、労働者に平均賃金の60%以上の手当を支払いなさい。
ということです。
パートやアルバイトも休業手当をもらえる理由
上で見たように、労働基準法26条では、「労働者」に手当を支払わなくてはならないと書かれています。
「労働者」とは、正社員だけでなく、契約社員もパートやアルバイトも含みますからご安心ください。
同じく労働基準法9条に「労働者」の定義が示されています。
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法では、正社員も契約社員もパートやアルバイトもみんな等しく「労働者」なのです。
休業手当をもらえる条件
休業手当をもらえるのはどんなときか ?
会社の責(都合)によって休業する場合だけです。
具体的には、例えば次のようなケースが該当します。
[会社の都合とは]
・機械の故障
・原材料や燃料の不足
・運転資金の不足や経営難による操業停止
・生産過剰による操業短縮
・監督官庁の勧告による操業停止
など。
天災その他の不可抗力による場合は会社の責任ではないので、休業手当をもらうことはできません。
また、本人の都合によって休む場合も当然ですが休業手当はもらえませんよ。
その場合は有給休暇を取得するか、病気やケガで働けない場合は休職して「傷病手当」をもらうことができます。
「傷病手当」についてはこちらをご参照ください。
休業手当はいくらもらえるか ?
休業手当は、既にお伝えしたように「平均賃金の60%以上」と定められています。
ここでいう平均賃金とは直近3ヵ月間の総賃金から1日当たりの平均賃金を算出した日額を言います。
例をあげてご説明しますね。
最近の3ヵ月の給料(残業代込み)を仮に次のように想定しましょう。
( )内は暦日数です。
28万円(30日)
30万円(31日)
27万円(30日)
平均賃金 = 3ヵ月間の総支給額 ÷ 3ヵ月間の総暦日数
ですので、
平均賃金 = (28万円+30万円+27万円)÷(30日+31日+30日)
= 85万円÷91日 = 9,340円(端数切捨て) となります。
休業手当は、仮に最低ラインの60%とすると、
1日あたりの休業手当 = 9,340円 x 60% = 5,604円(端数は四捨五入)
となります。
そして、会社が本来稼働するはずだった日数をかけた金額をもらうことができます。
1ヵ月休業してその間の稼働するはずだった日数が21日間だったとすると、
この例では
5,604円/日 x 21日 = 117,684円 となります。
ここで、注意することは、稼働日ではなく暦日数で割るところです。
この例の平均賃金の60%なら、 1ヵ月分で (28万円+30万円+27万円)÷3 x 60% = 182,000円になるかと期待してしまいますが、もらえるのは117,684円。
ちょっと期待外れな額ですよね。
これは平均日額を出すときに、稼働日ではなく暦日数で割っていなが、支給額を算出するときには稼働日数を掛けているからです。
これなら有給休暇にした方が良いのでは・・・。
休業手当より有給休暇が有利
会社の都合で休業した場合、有給休暇が残っているなら休業手当をもらわずに有給休暇を使うという手もあります。
これなら100%の賃金をもらえるので、休業手当より断然有利です。
ただ、会社が業務を再開するめどが立っているのであれば、有給休暇を全部使ってしまわない方が良いでしょう。
業務再開後に自己都合で休まなければならなくなったとき、欠勤扱いとなってその分給与から控除されてしますから。
休業手当はいつまでもらえる
既に述べた通り
休業手当は休業期間中ずっともらえます。
ただ、長期にわたる休業は会社の負担が大きいので、へたをすると倒産という事態になりかねません。
休業が長引きそうな場合は、次の勤め先を探しておいた方が良いです。
もらえないときどうする
休業手当を支払うことは、法律で定められた会社の義務です。
もしもこれを支払わなかったり、60%未満しか支払わない場合は違法となります。
その場合は、当然会社に請求しますが、それでも「ないものはない !」と言って支払ってくれないことが考えられます。
その場合は口頭だけでなく、配達証明付きの内容証明郵便により文書で請求することをおすすめします。
その上で、労働基準監督署に申告して会社に休業手当を支払うよう指導してもらうことができます。
不謹慎ですが、いっそ倒産してくれた方が賃金は回収しやすくなります。
「未払賃金の立替払い」という制度があるからです。
これは、倒産した会社に代わって、国が労働者に未払いの賃金や退職金などを支払ってくれる制度です。
この制度を利用すれば、未払賃金の8割を(上限は退職時の年齢に応じて88万円~296万円)回収することができます。
ただし、会社が1年以上事業活動をしていたことなど、条件があります。
詳しくは厚生労働省のサイトをご参照ください。
もらいながらほかの仕事をして良いか ?
休業手当をもらっても、最低でこれまでの平均賃金の60%しかもらえません。
これではとても生活できない !
失業ではないので、失業保険はもらえません。
それなら、他の仕事をして良いのでしょうか ?
パートやアルバイトは掛け持ちありですから、他の仕事をしても問題ありません。
でも、正社員ならどうでしょう ?
就業規則を確認してください。
そこに「副業禁止」である旨が書かれていればNGです。
そうは言っても会社が賃金を満額出してくれないわけですから、上司に相談してみてください。
「特例」として認めてもらえるかも知れませよ。
休業補償と休業手当の違い
休業手当と良く似た名称の休業補償という制度があります。
名前は似ていても、両者は別物です。
休業手当は会社が労働者に支払うものです。
一方、休業補償は国の制度です。
休業補償は、業務上または通勤途中の災害による怪我や病気のために働けなくなったときに、平均賃金の80%を保証してくれるものです。
休業補償も休業手当同様に、パートやアルバイトでも対象となりますよ。
休業補償と休業手当を比較表にしておきますね。
休業補償 | 休業手当 | |
条件 | 業務上または通勤途中の災害による怪我や病気のために働けなくなったとき | 会社都合により休業したとき |
支給額 | 平均賃金の80% 休業補償給付 : 給付基礎日額の60% 休業特別支給金 : 給付基礎日額の20%
| 平均賃金の60%以上 |
支給期間 | 休業の間 ただし、療養開始日から1年6ヵ月を経過した日または同日後に、一定の傷病等級に該当すると、傷病(補償)年金に切り替わります。 | 休業の間 |
支払い元 | 国 | 会社 |
おわりに
いかがでしたか ?
休業手当はパートやアルバイトでももらえるのか、金額と期間について、また、もらえないときどうしたらいいのか、さらに休業補償との違いについて説明してきましたが、参考になりましたでしょうか ?
元気に働けるのが一番ですが、働けないときもできる限りの手当や補償は確保したいですね。
最後までお読みくださってありがとうございました。