年金は働くと減額されるっていうけど、本当でしょうか ?
はい。
働いて一定以上の収入があれば減額されます。
でもご安心ください。
年金をもらいながら働いて損をすることはありません。
年金しかもらわない場合に比べて、必ず収入は増えるからです。
それに、たいていの人は年金を受け取りながら働いても減額されることはありません。
減額されるのは収入がかなり高い人だけです。
ここでは、年金が働くことで減額される条件について分かりやすく解説してゆきます。
年金が働くと減額される理由
ここでいう年金とは「厚生年金保険」を指します。
つまり、「保険」なのです。
年金を必要とするできるだけ多くの人に支給を続けるために、限りある財源を可能な限り温存することが目的と言えるでしょう。
働いて収入の多い人には一部の受け取りを我慢してもらうということです。
在職老齢年金の支給停止とは
働きながらもらう年金のことを「在職老齢年金」と言います。
「在職老齢年金」は、働いて得た収入との関係で一部、または全部が停止されることがあります。
この停止される額のことを「支給停止額」と言います。
それではまず、在職老齢年金の支給停止条件を見ておきましょう。
支給停止条件
「支給停止」の条件は次の通りです。
年金月額 + 給与月額 > 48万円で減額される
なお、令和4年4月に65歳未満の在職老齢年金に設定されていた28万円の壁が廃止されました。
つまり支給停止条件が緩和されたのです。
令和4年3月までの支給停止条件は
60歳~64歳の場合
年金月額 + 給与月額 > 28万円で減額される
でしたが、令和4年4月からは停止条件が緩和され、65歳以上で働いた場合と同じ
年金月額 + 給与月額 > 47万円で減額される
に統一されました。
そして令和5年4月から基準額が48万円に改定されています。
では、具体的に年金はいくら減額されるのか、順にご説明しますね。
その前に「支給停止額」の算出に使う言葉の説明をしておきましょう。
年金月額 = 1ヵ月当たりの年金総額
(正しくは「基本月額」と言いますが、ここでは分かりやすく「年金月額」と言い換えます)
給与月額 = 給料の標準報酬月額※+1年間の賞与÷12で割った額
(正しくは「総報酬月額相当額」と言いますが、ここでは分かりやすく給与月額」と言い換えます)
標準報酬月額とは、社会保険料を簡単に計算するために、毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で等級分けしたものです。
健康保険は1~50等級 厚生年金は1~31等級 に分けられています。
再雇用は特別扱い
標準報酬月額は通常は給料が2等級以上変わってから4ヵ月後に変更となります。
しかし、再雇用されて給料が下がった場合はその月に新たな標準報酬月額が設定されます。
つまり、新たに雇用されたとみなされるのです。
通常、再雇用で給料は下がります。
もしも4ヵ月間待たされて、その間給料が下がる前の標準報酬月額が適用されると、28万円や47万円の壁に抵触して年金が減額される恐れがあります。
それを防ぐために、再雇用された月にすぐ標準報酬月額が変更されるのです。
次に支給停止となる場合の額を具体的な例で確認しましょう。
支給停止額の計算例
年金もらいながら働く場合は、年金月額と給与月額の合計に48万円のボーダーラインが設けられます。
次の2通りなので分かりやすいですね。
年金月額(A)と給与月額(B) | 支給停止額(減額される年金の月額) |
①A + B ≦ 48万円 | 0(減額なしで全額支給) |
②A + B > 48万円 | (A + B – 48万円) x 0.5 が減額される |
出典 : 日本年金機構
在職老齢年金の計算方法
仮に次の例でいくら減額されるか見てみましょう。
年金月額 : 16万円
給料 : 22万円とすると標準報酬月額も22万円
賞与 : なし
給与月額 = 22万円
年金月額と給与月額の合計は
16万円 + 22万円 = 38万円
となり、48万円以下ですから、年金の減額はありません。
よほどの高給取りでなければ48万円を超えることはないでしょう。
大抵の人は年金をもらいながら働いたら働いた分だけ収入が増える
のです。
もう1つ例を見ておきましょう。
年金月額が20万円、給与月額が36万円だとしたら、
20万円 + 36万円 = 56万円
48万円を超えるので、支給停止額、つまり減額は
支給停止額 = (20万円 + 36万円 – 48万円) x 0.5 = 4万円
が減額されることになります。
それでも年金と給料と合わせて(20万円 - 4万円) + 36万円 = 52万円はもらえるわけですから、年金だけの20万円に比べて月額で32万円も多くなるのです。
70歳以上の在職老齢年金
在職老齢年金は、70歳も同じ扱いではないかと思うでしょうが、少しだけ事情が違います。
それは、
厚生年金保険に加入できるのは70歳になるまで
ということです。
70歳に達しした時点で厚生年金保険の被保険者の資格を失います。
したがって70歳以上の人は働いていても厚生年金保険料は徴収されません。
ですから、70歳以上で働いても将来もらえる年金額に影響はありませんよ。
ただし、働いていれば既にご説明した在職老齢年金制度の年金調整の対象となりますから、給与月額が高いとご説明した条件で年金が減額されることとなります。
停止された額は後から戻るか ?
「停止」というからには、後で働くのを辞めたら停止が解除されて、その分が戻ってくると思う人もいるようです。
でも、停止された分は後からは戻りません。
減額が無くなるだけで、停止期間中に減額された分をあと回しでもらえるわけではありませんのでご注意くださいね。
年金が働くともらえない場合
既に年金が減額される額の計算方法はご説明しましたね。
ではここで、年金が全額支給停止になってもらえない場合も見ておきましょう。
先ほどの例と同様に年金月額が16万円として、年金月額 + 給与月額 > 48万円とすると、
(年金月額 + 給与月額 – 48万円) x 0.5 が減額されますからこれが年金月額維持用になれば年金は全額支給停止となります。
つまり、
(年金月額 + 給与月額 – 48万円) x 0.5 = 年金月額
で全額停止です。
年金月額16万円とすると、
(16万円 + 給与月額 – 48万円) x 0.5 = 16万円
この式から給与月額を求めると
給与月額 = 32万円 -16万円 + 48万円 = 64万円
給与月額が64万円以上だと年金はもらえないことになります。
けっこうな高額所得者ですよね。
年金が減額されたりもらえない場合もあるなんて、やはり年金をもらいながら働くのは損だ !
と思うかも知れませんね。
その点について次でご説明しましょう。
年金をもらいながら働いても損はしない !
冒頭お伝えしたように、年金をもらいながら働いても損はしません。
年金しかもらわない場合に比べて、必ず収入は増えるからです。
それに、得することがあります。
働いて年金が全額支給停止になったとしても、働いている間は厚生年金保険料を払い続けることになります。
その結果
将来もらえる年金額は確実に増える
ことになります。
つまり、長期的に見ても「得」なのです。
国民年金は40年間保険料を払い続けると「満額」となってそれ以上はもらえる年金は増えません。
それに対して、会社員や公務員が加入する厚生年金には「満額」の概念がなく、受給額は加入期間の長さと賞与を含む月給の平均額で決まります。
そのため、厚生年金の加入期間が長くなればなるほど、もらえる年金は増えるのです。
おわりに
いかがでしたか ?
年金が働くと減額される条件とその額についてお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?
最後にまとめておきますね。
・年金をもらっていると年金額と給与の額によって減額がある
・年金額と給与の額(標準報酬月額)の合計が48万円以下なら減額なし
・減額があっても働けば総収入は確実に増える
・年金をもらいながら働いても、厚生年金に加入していなければ減額なし
・厚生年金に加入して働けば将来の年金が増える
老齢になっても元気で働けるのはありがたいことですよね。
最後までお読みくださってありがとうございました。