定年退職したら失業保険は自己都合扱いになるのでしょうか ?
その前に、そもそも定年退職の場合でも失業保険をもらえるのか ?
はい。
もらえますよ。
ただし、定年が65歳未満の場合に限ります。
失業保険は64歳までが受給対象なのです。
65歳以上で求職する人は、失業保険の代わりに一時金として、高年齢求職者給付金をもらうことができます。
それでは、65歳未満で定年退職して失業保険をもらうときは自己都合扱いでしょうか ?
それとも定年は会社が決めたことだから会社都合 ?
失業保険は、自己都合か会社都合かによって、受給期間が異なります。
ですから、自己都合となるか会社都合となるかは大事なのです。
答えは継続雇用制度(再雇用制度)があるかどうかによって異なります。
ここでは、定年退職したときの失業保険は自己都合扱いか会社都合か、さらに、いつまで・いくらもらえるのかについて詳しく解説してゆきます。
はじめに、失業保険の定年退職の場合のポイントをあげておきます。
次の3つです。
- 待期期間は7日間のみで2ヵ月の給付制限期間はない
- 自己都合と会社都合の違いは受給期間だけ
- 支払い期間を1年間延長できる
継続雇用制度とは、高年齢者雇用安定法によって事業者に義務付けられた65歳までの雇用確保措置のひとつです。
定年年齢は60歳を下回ってはならず、企業は次のいずれかの措置を講じなければなりません。
①定年の引上げ
②継続雇用制度の導入
③定年の廃止
高年齢者雇用安定法は、公的年金の支給開始年齢の引き上げを踏まえて定められた法律です。
定年退職の場合失業保険は自己都合か会社都合か ?
2012年改正の高年齢者雇用安定法では、会社は本人が希望する場合65歳まで雇用することが義務づけられています。
そこで会社は、再雇用制度とか、継続雇用制度という制度を設けて雇用を確保しています。
では、自己都合となる場合と会社都合となる場合の各々についてみてゆきましょう。
自己都合でも2ヵ月の給付制限期間がない
継続雇用制度があるにもかかわらず、本人が希望しないで60歳の定年で会社を辞めて場合は自己都合とみなされます。
ただし、自己都合扱いでも
2ヵ月間の給付制限期間はありません。
この点が定年退職の特徴と言えます。
会社都合となる場合
それに対して、本人が再雇用を望んだにもかかわらず、何らかの理由で再雇用・継続雇用が認められなかった場合は、自己都合ではなく、特定理由離職者として、会社都合の条件で失業保険を受給することができます。
自己都合と会社都合の比較
以上を自己都合と会社都合の比較としてまとめておきますね。
失業保険の退職理由による区別
- 本人が再雇用を希望しなかった場合は自己都合
- 本人が希望したにもかかわらず再雇用されなかった場合は会社都合(特定理由)
自己都合と会社都合の扱いの相違点
自己都合と会社都合で扱いが違う点は「受給期間」だけです。
- 違うのは受給期間のみ
具体的な期間については後ほどご説明します。
定年退職自己都合か会社都合かによる場合失業保険の比較
本人が再雇用を希望しなかった場合 | 本人が希望したにもかかわらず再雇用されなかった場合 | |
待期期間 | 7日間 | 7日間 |
受給期間 | 受給期間は自己都合退職並み | 受給期間は会社都合退職と同じ |
受給額 | 年齢と雇用保険加入期間による | 同左 |
失業保険はいつまで受けられるか
定年退職後に失業保険をいつまで受けられるかは、雇用保険の被保険者であった期間と離職理由によって異なります。
下表のとおりです。
失業保険受給可能期間 |
||
雇用保険の被保険者であった期間 | 本人が再雇用を希望しなかった場合 | 本人が希望したにもかかわらず再雇用されなかった場合 |
1年未満 | 0日 | 90日 |
1年以上5年未満 | 90日 | 150日 |
5年以上10年未満 | 90日 | 180日 |
10年以上20年未満 | 120日 | 210日 |
20年以上 | 150日 | 240日 |
ただし、冒頭述べたように、定年後の失業保険は60歳以上65歳未満が前提ですよ。
詳しく見てゆきましょう。
本人が再雇用を希望しなかった場合
本人が再雇用を希望しなかった場合でも失業保険を受けることができます。
上表のとおり最長は雇用保険加入期間が20年以上の場合で150日間です。
本人が希望したにもかかわらず再雇用されなかった場合
本人が再雇用を希望しなかった場合は雇用保険の被保険者であった期間が1年未満だと失業保険を受けられません。
でも、本人が希望したにもかかわらず再雇用されなかった場合は雇用保険の期間が1年未満であっても失業保険を受けることができます。
しかも受給期間が長くなります。
最長で雇用保険加入期間が20年以上の場合の240日間です。
定年退職の場合失業保険の額は
では次に定年退職後の失業保険の額についてご説明しましょう。
はじめに定年退職前6ヵ月間の基本給と手当の合計を1日あたりの額に換算した「賃金日額」を算出しておきます。
例えば基本給+手当が月額360,000円の場合なら、
賃金日額 = 360,000/月 x 6ヵ月÷ 180 = 12,000円
定年退職時の賃金日額によって給付率が変わり、失業保険の額(基本手当日額)が決められます。
[離職時の年齢が 60~64 歳]
賃金日額(円) | 給付率 | 基本手当日額(円) |
①2,500 円以上 5,010 円未満 | 80% | 2,000 円~4,007 円 |
②5,010 円以上 11,090 円以下 | 80%~45% | 4,008 円~4,990 円 (※1) |
③11,090 円超 15,890 円以下 | 45% | 4,990 円~7,150 円 |
④15,890 円(上限額)超 | – | 7,150 円(上限額) |
給付率が変動する場合は次の計算式によって算出します。
※1 次のいずれかの低い方
・基本手当日額 = 賃金日額 x 80% – 賃金日額 x (賃金日額-5,010)/6,080) x 0.35
・基本手当日額 = 賃金日額 x 50% + 4,436
この例では賃金日額が12,000円ですから、上の表の③に該当します。
賃金日額は、
12,000円 x 45% = 5,400円
となります。
失業保険は28日ごとに支給されるので、1回あたりの支給額は、
5,400円/日 x 28日 = 151,200円
この額を受給可能期間の間もらうことができるのです。
定年退職なら失業保険の受給期間を延長できる
失業保険の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。
ところが、60歳以上65歳未満の人が定年退職で離職する場合は、受給期間を1年間延長できるのです。
ただし、
受給期間の延長は、失業保険がもらえる期間が延びるわけでははありません。
失業保険の受給を保留することができるという意味です。
定年退職で離職した人が、「少し休んでから働きたい」と思うなら受給期間の延長制度を利用してから失業保険を受けながら求職活動をすることができますよ。
満65歳以上で退職した場合は失業保険がもらえない
失業保険は満64歳以下が対象で、65歳以上ではもらえないこと、その代わり働く意思があるなら高年齢求職者給付金をもらえることは既にお伝えしました。
では高年齢求職者給付金はいくらもらえるのでしょう。
ここでも初めに賃金日額から基本手当日額を求めておきます。
離職時の年齢が65歳以上だと、65歳未満とは基本手当日額の表が少し違ってきます。
[離職時の年齢が65歳以上]
賃金日額(円) | 給付率 | 基本手当日額(円) |
①2,500 円以上 5,010 円未満 | 80% | 2,000 円~4,007 円 |
②5,010 円以上 12,330 円以下 | 80%~50% | 4,008 円~6,165 円(※3) |
③12,330 円超 13,630 円以下 | 50% | 6,165 円~6,815 円 |
④13,630 円(上限額)超 | – | 6,8150 円(上限額) |
※3 基本手当日額 = 賃金日額 x 80% – 賃金日額 x (賃金日額 – 5,010)/7,320) x 0.3
65歳未満のときと同様に、
基本給+手当が月額360,000円とすると、
賃金日額 = 360,000/月 x 6ヵ月÷ 180 = 12,000円
上の表の②に該当しますから、
・基本手当日額 = 賃金日額 x 80% – 賃金日額 x (賃金日額 – 5,010)/7,320) x 0.3
基本手当日額
= 12,000円 x 80% – 12,000円 x (12,000円 – 5,010円)/7,320) x 0.3
= 9,600 – 4,828 = 6,162円
となります。
そして、被保険者であった期間によって次のように額が計算されます。
被保険者であった期間 | 高年齢求職者給付金の額 |
1年以上 | 基本手当日額の50日分 |
1年未満 | 基本手当日額の30日分 |
仮に10年間であったとすると、
高年齢求職者給付金の額 = 6,162円/日 x 50日 = 308,100円
を一時金としてもらうことができます。
おわりに
いかがでしたか ?
定年退職したら失業保険は自己都合扱いか会社都合かについて、また、いつまで・いくらもらえるのかについて解説してきましたが、参考になりましたでしょうか ?
満65歳未満なら失業保険をもらえますから、有効に活用してくださいね。
最後までお読みくださってありがとうございました。