企業年金の受け取り方には次の3種類あることご存知でしたか ?
・一時金として受け取る
・一部を一時金で、残りを年金で受け取る
・年金で受け取る
一般的には年金で受け取るより一時金で受け取る方が有利と言われています。
理由は税制面で一時金の方が優遇されているからです。
でも、本当に税制面だけを考えればよいのでしょうか ?
ここでは企業年金の受け取り方として、一時金として受け取る場合と年金として受け取る場合の注意点を解説しています。
企業年金は受け取り方で扱いが異なる
企業年金は受け取り方で税制上の扱いが異なります。
どう違うのか見ておきましょう。
一時金として受け取った場合
企業年金を一時金で受け取ると、税制上は「退職所得」という扱いになります。
そして退職所得は税制面では非常に優遇されているのです。
・所得控除額が大きい
・所得控除額を差し引いた後で更にその1/2しか課税対象にならない
そのため課税対象額が大幅に減るのです。
退職金の額と金属年数によっては税金がかからない仕組みになっています。
詳しくはこちらをご参照ください。
これが、「企業年金は一時金で受け取った方が有利」と言われる理由です。
年金として受け取った場合
では、企業年金を年金として受け取ると、税制上はどんな扱いになるでしょう ?
こちらは「雑所得」となり、退職所得のような優遇措置はありません。
しかも、雑所得は他の雑所得とし合計して課税対象となりますから、企業年金だけを考えればよいわけではありません。
65歳になれば国民年金と厚生年金の受給が始まります。
そしてこれららも「雑所得」なのです。
ですから、企業年金と国民年金と厚生年金の合計額に対して課税されることになります。
それだけではありません。
所得の合計は健康保険料や住民税の算出根拠ともなりますので、要注意です。
企業年金によって所得が増えれば健康保険料と住民税が増える可能性があるのです。
所得税の話に戻ります。
もしも企業年金が確定給付企業年金法に基づいた確定拠出年金で、自分も積立金を拠出していた場合は、一時金の額から自分が拠出した金額を控除した金額に相当する部分のみが課税対象となります。
自分が拠出した分は非課税ということなのです。
企業年金を年金として受け取る場合のメリットは ?
税制面だけを見れば一時金として受け取った方が断然有利と言えることは見てきました。
では、年金として受け取る場合にはメリットはないのでしょうか ?
管理しなくてよい
一時金で受け取ってしまえばそのお金は自分で管理・運用しなければなりません。
使ってしまうというリスクがあります。
それに対して年金として受け取れば、管理しなくても毎年一定額をもらえるので安心できます。
企業年金の多くは10年とか20年の有期ですが、中には終身を選択できる企業年金もあります。
この場合は寿命が延びている今の時代なら、一時金で受け取るよりも終身の年金を選択するのが賢明と言えそうですね。
公的年金の繰り下げ受給が可能
企業年金を60歳から70歳までの10年間で受け取ることにすれば、65歳からの公的年金を70歳まで繰り下げ受給すると言う手があります。
企業年金を公的年金とダブらせないことで、所得税、健康保険料、そして住民税の負担を軽くすることができます。
さらに、将来の公的年金の受給額を増やすことにもつながります。
公的年金の繰り下げ受給と言うのは受け取る時期を後の方にずらすことで、年金額が増額となるメリットがあるのです。
公的年金である老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらも1ヵ月繰り下げると0.7%の増額となります。
1年では0.7% × 12ヵ月 = 8.4%
65歳から70歳まで 5年間では8.4%× 5 = 42%
の増額となるのです。
これはオイシイですよね。
ただし、その間企業年金だけで生活できることが前提です。
また、まんいち公的年金の受給開始からの生存期間が短い場合はトータルではもらう額が少なくなってしまいます。
もちろん一時金として受け取って、自分の貯金と合わせて生活できるなら公的年金の繰り下げ受給は可能です。
そうは言っても生活レベルを考えたとき、公的年金だけでは不十分と言われていますよね(貯蓄が2,000万円は必要とか・・・)。
企業年金だけでも不十分であれば、公的年金の繰り下げ受給という手は使えません。
生活が苦しくならないことが第一ですから、無理はしないことです。
おわりに
いかがでしたか ?
企業年金の受け取り方は一時金が有利か、年金として受け取るメリットはあるかについてお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?
企業年金をもらえない人が大勢いる中で、企業年金をもらえるのはそれだけで恵まれていると言ってよいでしょう。
せっかくの企業年金ですから、ライフプランをしっかり考えて受け取りたいものです。
この記事が自分に合った企業年金の受け取り方を検討する一助となれば幸いです。
最後までお読みくださってありがとうございました。