定年後の再雇用で社会保険はどうなるのか ?
70歳定年を目標とするよう厚生労働省からの指針が出ていますが、2021年1月現在、定年を70歳まで引き上げている会社は多くはありません。
厚生労働省が令和3年1月8日に公表した令和2年の「高年齢者の雇用状況」集計結果によると、65歳定年企業は18.4%であり、残りの80%程度はいまだに60歳定年であると思われます。
60歳定年の会社がまだまだ多いのです
定年後に再雇用された多くの人は、給料や勤務時間、役職などの労働条件が定年前と変わります。
ここでは、定年後の再雇用で社会保険はどうなるのか、継続して加入できるのか、その場合保険料はどうなるのか、また、継続できない場合はどうしたら良いかについて詳細に解説してゆきます。
定年後の再雇用で社会保険継続の場合
定年後の再雇用でこれまで加入していた社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入を継続するには条件があります。
また、再雇用で給料が少なくなると社会保険料も変わります。
それでは順に見てゆきましょう。
社会保険継続の条件
定年後の再雇用で、「1週間の所定労働時間」又は「1カ月の所定労働日数」が通常の労働者の4分の3以上であれば、健康保険と厚生年金保険の被保険者資格はそのまま維持されます。
ですから、健康保険料と厚生年金保険料の両方は引き続き給料から天引き(控除)されることとなります。
では一体社会保険料はいくらになるのでしょう。
社会保険料はどうなるか
給料が減って健康保険と厚生年金保険の社会保険料がそのままではたまりません。
給料の減額に応じて当然社会保険料も安くなるのが順当ですよね。
但し、条件があります。
標準報酬月額が2等級以上下がらなければ社会保険料は変わりません。
標準報酬月額とは毎月の給料などの額を一定の幅で区切りのよい幅で等級分けしたものを言います。
健康保険では1~50等級に区分しており、厚生年金保険では1~32等級に区分して、等級ごとに保険料を定めています。
通常は4月~6月の3ヵ月間の給与の平均額から標準報酬月額を決定し、その年の9月から1年間の社会保険料を決定します。
つまり、4月に再雇用されて給料が下がって、標準報酬月額が2等級以上下がっても、9月になるまでは社会保険料は変わらないのです。
ただ、多くの会社では社会保険料を翌月の給与から控除しますので、実際には改定後の社会保険料が適用されるのは、10月からとなります。
結果的に4月に再雇用されて給料(標準報酬月額)が2等級以上下がっても、6ヵ月の間給料が下がる前の高い社会保険料を払い続けることとなります。
そこで
損をしないための方法が、「同日得喪」
です。
「同日得喪」とは、社会保険の資格を一旦喪失させて、同じ日に再び資格を取得し直すことを言います。
「同日得喪」を行うことによって、給与改定の月から新しい標準報酬月額が適用されますので、翌月の給料から新しい、つまり減額された社会保険料が控除されることになります。
ただし、「同日得喪」ができるのは60歳以上の人に限りますし、再雇用で標準報酬月額が2等級以上低くなっていなければ意味がありません。
会社の給与担当者が再雇用に慣れた人なら黙っていても「同日得喪」の手続きをしてくれるでしょう。
しかし、給与担当者が再雇用に不慣れで「同日得喪」に関する知識がない場合は放置されてしまいますから、こちらから手続きについて確認した方が良いですよ。
4月~6月の算定期間以外でも、標準報酬月額が2等級以上低くなって、それが3ヵ月続けばその翌月(つまり給料の額が変わって4ヵ月目)から新しい標準報酬月額となって社会保険料が改定されます。
これを「月変」と言います。
再雇用の時期が4月でない場合は月変が適用され、この場合も「同日得喪」の適用が可能です。
定年後の再雇用で社会保険の資格を喪失する場合
定年後の再雇用で、「1週間の所定労働時間」又は「1カ月の所定労働日数」が通常の労働者の4分の3未満であれば、健康保険と厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。
資格を喪失時の健康保険の選択肢は2つ
健康保険については、国民健康保険に加入するか協会けんぽなどのこれまで加入していた健康保険の任意継続をする必要があります。
扶養家族がいる場合は任意継続の方が保険料が安くなるケースが多いです。
国民健康保険には、「扶養」の概念がありませんから、これまで扶養していたか付属の人数分加入しなければいけないからです。
年金保険は国民年金保険のみの加入となります。
配偶者を扶養している場合の注意
協会けんぽの任意継続をせず資格を喪失してしまった場合は、同時に厚生年金保険も加入資格を喪失します。
健康保険と厚生年金はセット
なのです。
繰り返しになりますが、年金保険は国民年金保険のみの加入なります。
その際注意すべきことは、これまで扶養してきた配偶者の年金保険料の扱いです。
もしも扶養しいた配偶者が60歳未満なら、第3号被保険者ということで、これまで厚生年金保険料を払う必要はありませんでした。
しかし、再雇用の際に健康保険を任意継続せずに国民健康保険に切り替えた場合は、配偶者は第3号被保険者から第1号被保険者に変わってしまいます。
その結果、配偶者も国民年金保険料を払わなければいけなくなりますからご注意ください。
おわりに
いかがでしたか ?
定年後の再雇用で社会保険はどうなるのかについて、継続できるケースとできないケース、さらに継続する場合と継続しない場合の注意点について解説してきましたが、参考になりましたでしょうか ?
再雇用という人生の大きな節目、慌てずに通過したいですね。
最後までお読みくださってありがとうございました。