パートは有給もらえないのでしょうか ?
いいえ、パートタイマーも条件を満たせば有給休暇を取得できます。
週3日の勤務でも、あるいは週1日の勤務だってもらえるのです。
ただし有給を何日もらえるかは勤務日数(所定労働日数と言います)で差があります。
所定労働日数が週5日あるかが境目。
また、有給休暇は権利だけではなく半ば「義務」ともなっていることはあまり知られていません。
ここではパートは有給をもらえないのか、その条件について、またパートの場合の有給の日数について、さらに権利と義務の様々な疑問についても解説してゆきます。
パートは有給をもらえない ? もらう条件とは
冒頭述べたようにパートも条件を満たせば有給休暇をもらうことができます。
その条件とは次の2つ。
・雇い入れの日(勤務を開始した日)から6ヵ月経過していること
・その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
この条件は労働基準法第39条に定められていて、正社員もパートやアルバイトも区別はありません。
見てお分かりの通り、
週何日、あるいは何時間以上働くかは有給休暇付与の条件には含まれていません。
なので、たとえ週に1日の勤務でも働き始めて6ヵ月経過して、その間所定労働日数(週1日なら6ヵ月で24日)の8割以上働いていれば有給休暇が与えられるのです。
ただ、何日もらえるかは所定労働日数によって変わるということです。
では何日有給休暇をもらえるか具体的に見てゆきましょう。
有給休暇は何日もらえるか
もらえる有給休暇の日数は、所定労働時間が週30時間、日数にして週5日あるかによって異なります。
週5日以上勤務の場合
所定労働日数が週5日以上(週30時間以上)の場合、もらえる有給休暇の日数は次のようになります。
6ヵ月勤務すると10日間の有給休暇がもらえます。
その後、1年ごとに1日ずつ増えて最高は6年6ヵ月以上の勤務で20日間付与されます。
以降は毎年20日間ずつもらうことができます。
表にしておきますね。
勤続年数(年) | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
有給休暇日数(日) | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
では次に所定労働日数が週4日以下の場合についてご説明しますね。
週4日以下の勤務の場合
パートで週4日以下の勤務の場合は、所定日数に比例した付与となります。
所定労働日数が週4日だと6ヵ月勤務で有給休暇は7日間。
以下順に週3日の勤務で5日間、2日の勤務で2日間、そして1日の勤務なら1日の有給休暇を取得することができます。
こちらも表にしておきますね。
週所定 | 年間所定 | 勤続年数(年) | ||||||
労働日数 | 労働日数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
4日 | 169日~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日~ 72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
ここで有給休暇の日数が10日以上の部分をピンク色としたのは理由があります。
理由は次の「有給休暇取得の義務」の章でご説明します。
有給休暇には2年の時効があります。
せっかく溜めても2年間使わなければ古い方から順次消滅しますのでご注意ください。
最大溜めても20日間/年×2年=40日間ですよ。
有給休暇はいつでも取れるか?
たいていのパートさんが有給休暇を取得することができることは分かりました。
では有給休暇はいつでも好きな時に取れるのでしょうか ?
原則はYes です。
従業員は、年次有給休暇をいつ取得するかを決める権利があります。
これを「時季指定権」と言います。
でも、会社として休まれては困ることもあります。
そんなとき、会社は休む日の変更を求めることかできます。
これを「時季変更権」と言います
ポイントは、有給を採りたいときは前もって上司に「いついつ休みたいのですが、よろしいですか?」と確認を取っておくことです。
そのあと、周りの同僚にも早めに連絡しておくこと。
まずはメールで伝えます。
「○○月○○日に有給を撮らせていただきます。 □□部長ご承認済み。 御迷惑をおかけしますが、宜しく尾根会致します。」
そして、休む前日に再度「明日お休みをいただきますので、スミマセンが宜しくお願い致します。」
とこちらは変える直前に職場のみんなに聞こえるように口頭で言えば良いでしょう。
有給を申請して会社に拒絶されたら
もしも有給休暇を申請して会社に拒絶された場合は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に相談をしてみましょう。
有給休暇取得の義務とは ?
じつは、有給休暇はもらえるだけでなく、「消化」つまり実際に休まなくてはならないという義務があります。
厚生労働省が推進する「働き方改革」に基づいて2019年4月に施行された改正労働基準法で、有給休暇の取得が次のように義務づけられたからです。
1年間に付与される日数が10日以上であれば年5日間の有給休暇を取得すること。
これは労働者と言うよりは事業主に課せられた義務です。
違反した場合は対象となる従業員1人につき30万円以下の罰金が会社に科せられます。
パートタイマーの有給休暇取得義務
パートタイマーで週4日以下の労働日数でも、1年間に付与される日数が10日以上であれば年5日間の有給休暇を取得すべき対象となります。
上の表で赤文字部分に該当する人は年5日間の有給休暇を取得しなければなりません。
色を変えた理由がお分かりいただけましたね ?
繰り越しがある場合は
ただし、前年度の繰り越し有給休暇と今年度付与された有給休暇の合計が10日間を超えたとしても、今年度付与日数が10日未満であれば1年で5日以上の有給休暇を取得する義務は発生しません。
あくまでも今年有給休暇を10日以上もらった人だけが対象となります。
産休・育休の後でも年5日間の有給休暇取得が義務か ?
産休・育休から仕事に復帰した場合でも、1年で5日以上の有給休暇の取得が必要でしょうか ?
はい。
年10日以上の有休が付与されているならば、産休・育休明けであっても年5日の取得が必要となります。
そうは言っても復帰してから年間の残りの期間が短い場合は5日の有給休暇を取得することは実質的に無理なこともありますよね。
その場合は取れなくてもおとがめはありませんのでご安心ください。
その他の疑問
慶弔休暇や特別休暇も有給に含めるか ?
多くの会社では、慶弔休暇や夏季休暇など、いわゆる特別休暇を制度として設けています。
特別休暇も年間で取得しなければならない5日の有給休暇としてカウントするのでしようか?
答えはNOです。
特別休暇とは別に5日間の有給休暇を取得する必要があります。
年5日間の有給休暇取得を拒否できるか
会社から有給休暇を取得するよう指示されたとき、休みたくない理由(たとえば苦手なお姑さんが来るのであまり家にいたくないとか・・・)があったら拒否することはできるでしょうか ?
法定通り年間5日間の有給休暇を取ってもらわないと会社は罰則を受ける可能性がありますので、会社としては指定した日に勤務を拒否することができます。
ですから、結論としては有給休暇の取得を拒否することはできないということになります。
では次に、パートが有給休暇取得時にいくらもらえるか見ておきましょう。
パートの有給~金額の計算は ?
パートで、シフトによって労働時間が1日8時間だったり、4時間だったり、変わることがある場合、有給を取った時にもらえる給料の計算はどうなるでしょう ?
計算方法の基本は次の3つです。
①平均賃金を用いる
②通常賃金を用いる
③標準報酬日額を用いる
そして、この3つの計算方法のどれを用いて有給休暇の賃金を計算するかは、会社が決めます。
順にご説明します。
①平均賃金を用いる
過去3ヵ月間の賃金の平均値から日額を計算する方法です。
ある日は8時間、次の勤務は4時間など、シフトによって労働時間が異なる場合はこの方法が適しています。
次の計算方法のいずれか高い方を取ります。
・過去3ヵ月間の賃金合計÷過去3ヵ月間の日数
・(過去3ヵ月間の賃金合計÷過去3ヵ月間の労働日数) × 0.6
②通常賃金を用いる
所定労働時間働いた日に支払われる、通常の日額賃金を用います。
シフトによって1日の労働時間が変わらない場合に適しています。
③標準報酬日額を用いる
そもそも「標準報酬日額」って何でしょう ?
社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)に加入する際に決定する「標準報酬月額」という賃金等級の一覧表があります。
この標準報酬月額の30分の1に相当する額が標準報酬日額です。
1日の労働時間が決まっている場合は1ヵ月の労働日数をかけて月給を算出します。
その月給が標準報酬月額一覧のどれに当てはまるかで標準報酬月額が決まります。
おわりに
いかがでしたか ?
パートタイマーの有給休暇の日数について計算方法と取得の権利、さらに義務についてお伝えしてきましたが参考になりましたでしょうか ?
せっかくの権利ですから有効に活用したいものですね。
最後までお読みくださってありがとうございました。