退職後に扶養に入る条件はなんでしょう ?
無職なんだから働いている配偶者や子供の扶養に問題なく入れるだろう。
そう思うかも知れませんね。
でも、かならずしも家族の被扶養者になれるわけではありません。
特に年金をもらっている場合や、失業保険をもらっている場合は要注意です。
ここでは、退職後に扶養に入る条件について詳しく解説してゆきます。
退職後に扶養に入る条件
一口に「扶養」といいますが、扶養には次の2種類あることご存知でしたか ?
・税扶養
・健康保険扶養
それぞれの扶養の条件をご説明します。
税扶養の条件
税法上の扶養となる条件は大きく3つあります。
・収入の条件
・続柄の条件
・年齢の条件
収入の条件
税法上は、その年の1月から12月までの給与年収が103万以下であれば家族の扶養に入ることができます。
それに対して、年金収入の場合は、年齢によって扶養に入る条件は異なります。
・65歳未満の人 : 年収108万円以下であること
・65歳以上の人 : 年収508万円以下であること
・税法上の「収入」には、年金を含みます。
・一方、失業保険は「収入」に含まれません。
税法上の被扶養者になると、本来支払わなければならない所得税や住民税の一部が免除されるというメリットがあります。
一方、扶養に入れない場合は、本来の所得税や住民税を納めなければなりません。
被扶養者になったとしても、住民税は注意が必要です。
住民税は前年度の収入で決まりますので、今年度被扶養者になっても、前年度の収入が93万円以上あれば請求されますよ。
続柄の条件
6親等内の血族及び3親等内の姻族で同居していることが条件です(内縁は配偶者とは認められません)。
年齢の条件
16歳以上であること。
退職後なら16歳以上であることは確実ですが・・・。
健康保険の扶養の条件
ここでは多くの中小企業が加入している「協会けんぽ」の例でお話しますね。
大企業(常時700人以上が働いている事業所)の場合は独自に健康保険組合を持っていることが多いので、大企業にお勤めの方は健康保険組合にお確かめください。
健康保険の被扶養者になると、自分で国民健康保険に入る必要がなくなりますからその分経済的に楽になります。
健康保険の扶養に入る条件も、税法上の扶養の条件同様に収入、続柄、年齢の3つがあります。
収入の条件
収入が130万円未満でかつ働いているご家族(協会けんぽの被保険者)の年収の2分の1未満であることが被扶養者となる収入の条件です。
ただし、対象者が60歳以上もしくは障害厚生年金を受けている障害者の場合は180万円未満となります。
なお、ここでいう年収入とは、過去1年の年収ではなく、将来に向けて想定される年収を言います。
ですから、退職した年の年収が130万円以上でも、退職した翌月の収入が
130万円÷12 = 108,333円以下 であれば扶養に入ることができます。
そして、月の収入が108,333円を超えることがあっても、年間で130万円を越えなけれ扶養から抜ける必要はありません。
社会保険における「収入」には、次のものを含みます。
・年金
・失業手当
・出産手当金や疾病手当金
・交通費など
間柄の条件
3親等以内の親族であること(内縁関係も配偶者と見なされます)。
ただし、1親等でも子の配偶者、2親等でも配偶者の兄弟・姉妹や兄弟・姉妹の配偶者、3親等でも叔父叔母(伯父伯母)の配偶者などは、同居していることが被扶養者の条件に加えられます。
年齢の条件
75歳未満であること
税扶養と健康保険扶養を分かりやすく一覧表にしておきますね。
[被扶養者となる条件]
税法上の扶養条件 | 健康保険(協会けんぽ)の扶養条件 | |
続 柄 | 納税者と生計を一にする配偶者、6親等内の血族及び3親等内の姻族
(内縁関係は対象外) |
3親等内の親族 (内縁関係も配偶者) |
同居の有無 | 原則同居 | 親族の範囲によっては同居が条件 |
年 齢 | 16歳以上 | 75歳未満 |
年 収 | 給与収入 年収103万円以下 (その年の1月~12月)年金収入 65歳未満 : 年収 108万円以下 65歳以上 : 年収 158万円以下 |
130万円未満 (60歳以上又は障害者は180万円未満) (これから1年の想定額) |
通勤手当(非課税分)は含まない | 通勤手当(非課税分)も含む |
年金をもらうと扶養に入れないか ?
退職して年金をもらう場合は扶養に入ることができるでしょうか ?
とても気になりますよね。
ポイントは、
年金は、税法上も健康保険上も収入に含まれる
ということです。
それでは税法上と健康保険上のそれぞれについて、被扶養者になれるかどうかをみておきましょう。
税法上
上の表「被扶養者となる条件」から、年金の年額が65歳未満で108万円超、65歳以上なら158万円超であれば被扶養者にはなれません。
健康保険上
健康保険の場合、被扶養者になるための条件は収入が130万円未満でした。
この収入には年金も含まれることは既に述べた通りです。
かりに、収入が年金だけの場合は、月額にすると108,333円未満で扶養の対象になります。
年金は2ヵ月毎に支給されますから、1回の支給額が、
108,333円×2 = 216,666円
未満なら家族の扶養に入れることになります。
失業保険をもらうと扶養に入れない ?
結論は次の通りです。
・税法上は失業保険をもらっても扶養に入れる
・社会保険上は失業保険をもらうと扶養に入れないことがある
順にご説明します。
税法上は扶養に入れる
理由は次の通りです。
税制上、失業保険は非課税のため、扶養の条件の収入には含まれない
からです。
ですから、失業保険をもらっても税法上の被扶養者となることができます。
健康保険上は扶養に入れないことがある
失業保険をもらうと収入とみなされますが、協会けんぽ等、一般的には年収が130万円未満、月額にして108,300円未満の収入であれば扶養に入ることができます。
ただし、扶養に入れる条件は健康保険組合によっては微妙に異なります。
中には、待期期間中を含め、失業保険受給中や傷病手当金、出産手当金受給中も扶養には入れないという健康保険組合もあるようですので、ご家族が加入している健康保険組合に確認すると良いでしょう。
給付制限期間中は扶養に入れる
月額108,300円以上、つまり年収が130万円以上見込まれる失業保険をもらえる場合でも、扶養に入れるケースがありす。
それは、待期期間から給付制限期間中です。
失業保険は申請してもすぐにもらえるものではありません。
7日間の待機期間があり、自己都合退職(定年退職は自己都合退職に含まれる)の場合はさらに2ヵ月の給付制限期間があります。
この失業保険を受け取れない期間は、多くの健康保険組合では健康保険の被扶養者になることができます。
ただ、期間が短いので協会けんぽの被扶養者に入れてもらって、すぐまた自分で国民健康保険に加入したりと手続きが面倒なことはありますが・・・。
退職後に扶養に入る手続き
扶養に入る手続きは、扶養してくれるご家族(扶養者)が勤務先に申請書や異動届を提出することでなされます。
税制上の扶養手続き
扶養してくれるご家族が勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出すれば
OKです。
健康保険の扶養手続き
被保険者、つまり扶養者になる家族は事業主を経由して「被扶養者(異動)届」を日本年金機構へ提出します。
提出先は協会けんぽではなく日本年金機構ですが、本人(被保険者)は会社に提出すれば、会社が日本年金機構に提出してくれますから間違えることはありません。
おわりに
いかがでしたか ?
退職後に扶養に入る条件についてお伝えしてきましたが参考になりましたでしょうか ?
扶養に入れてもらえれば、税制面では所得税と住民税が軽減され、健康保険では国民健康保険に入らなくてもよくなります。
条件を満たしているかどうか、ぜひ確認してみてください。
最後までお読みくださってありがとうございました。