試用期間中に解雇されたら失業保険をもらうことはできるでしょうか ?
滅多にあることではありませんが、試用期間中の解雇は起こりえます。
また、試用期間中は健康保険などの社会保険に加入してもらえないこともあります。
失業保険(正しくは失業等給付金)をもらうための雇用保険に健康保険や厚生年金保険も労働者にとって非常に大事なものですから、加入条件をしっかり理解しておく必要があります。
ここでは試用期間中に解雇されたら失業保険をもらうことはできるか、また試用期間中に社会保険に入れてもらえるのかについて解説しています。
試用期間とは
試用期間は企業が「ミスマッチ」を防ぐための制度です。
採用したのはいいけれど、あまりに期待外れで到底正社員として引き続き雇うことはできないと会社が判断したとき、比較的解雇しやすい期間のことです。
「比較的」としたのは、解雇できないことの方が多いからです。
じつは試用期間は法律で定められているわけではありません。
企業が独自に定めるもので、たいていは1ヶ月~3ヵ月、中には6ヶ月とする会社もあります。
ではどんな場合なら試用期間中に解雇されることがあるのか確認しておきましょう。
試用期間中に解雇され得る場合
試用期間は比較的解雇しやすいと述べましたが、会社の判断で必ず解雇できるわけではありません。
解雇できるのは次のようなケースです。
勤務態度が極めて悪い
遅刻・欠勤が多いとか上司の指示に従わないなど、再三注意しても改めない場合。
能力不足
新人であれば業務に必要なスキルを習得できるように教育をすることはもちろん、教育してもできない場合は、配置転換をするなど、企業として手を尽くす必要があります。
その上でやっぱり「使えない」となった場合に初めて解雇が認められます。
会社が解雇を回避するための手を尽くしていない場合は、裁判になれば「不当解雇」となります。
[中途採用の試用期間は要注意]
ただし、中途採用の場合は、業務に対する十分な能力・スキルがあると言う前提での採用ですから、期待した能力がない場合は解雇が認められます。
例えば部長職として高給で採用したにもかかわらず部下の管理・指導ができない場合は、仮に裁判となっても解雇が妥当と判断されます。
正当な解雇事由があった場合、雇用から14日以内であれば会社は解雇予告なしに解雇することができます。
しかし、14日を過ぎると、予告が必要です。
会社は、30日以上前に従業員に対して解雇予告をしなければなりません。
もしも30日前までに解雇予告をしない場合は、会社は「解雇予告手当」を支払う必要があります。
解雇までの日数に応じた平均賃金を支払うのです。
試用期間中に解雇されたら失業保険はもらえるか ?
では、試用期間中に解雇されてしまった場合、失業保険はもらえるでしょうか ?
解雇により離職した場合は「特定受給資格者」に該当しますので、「会社都合退職」と同じに扱われます。
ですから、受給条件を満たしていればすぐに失業保険をもらうことができます。
受給条件とは、雇用保険の加入期間です。
試用期間中の解雇は特定受給資格者ですから、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上あることが条件です。
中途採用の場合は、前職から通算して6ヶ月以上あれば失業保険がもらえます。
一方、新卒の場合は、試用期間が1年を超えることはないので、「離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること」に該当しないことになりますね。
ところが、会社都合なら勤続期間が1年未満でも90日間失業保険をもらうことができるのです。
なお、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇は、「特定受給資格者」には該当しないため自己都合退職となります。
この場合は2ヶ月(注1)の給付制限期間がありますよ。
(注1)以前は自己都合退職の場合の給付制限期間は3ヶ月でしたが、2020(令和2)年10月1日以降は2ヶ月に短縮されました。ただし、短縮されるのは5年間に2度までです。
(注2)被保険者期間は、雇用保険の被保険者であった期間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を1ヶ月として算出します
試用期間が2ヶ月なら社会保険に入れてくれない ?
試用期間中の社会保険(失業保険のもととなる雇用保険のほか、健康保険と厚生年金保険といった)はどうなるでしょう ?
中小企業では、試用期間中に社会保険に加入させない例があります。
これは「2ヶ月以内の雇用は社会保険の対象外」であることを理由に会社が社会保険料をケチっているのです。
根拠としているのは、厚生年金保険法第12条第2号と健康保険法では第3条第1項第2号です。
どちらにも、
二ヶ月以内の期間を定めて使用される者は健康保険及び厚生年金保険の被保険者になれない
ことが記載されています。
しかし、これは期間を定めた「有期雇用契約」を指しているのであって、問題なければその後も継続して雇用することが前提の試用期間に当てはめるのは誤りです。
中小企業の経営者の中には、法の誤った解釈(というか勝手な解釈)で試用期間中の社員を社会保険に加入させないケースがあります。
ひどい場合は6ヶ月の試用期間を2ヶ月ごとに区切って繰り返して契約することで6ヶ月にわたって社会保険に入れないという悪質な会社もありますから、試用期間にはくれぐれもご注意下さいね(このケースはもちろん「違法」です)。
入社前に試用期間中も社会保険に入れてもらえることを確認した方が良いですよ。
念のため法律の条文をご紹介しておきますね。
この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。
一 船員保険の被保険者(以下略)
二 臨時に使用される者であって、次に掲げるもの(イに掲げる者にあっては一月を超え、ロに掲げる者にあってはロに掲げる所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く。)
イ 日々雇い入れられる者
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者
出展 : 健康保険法では第3条より抜粋
同じことが厚生年金保険法第12条第2号にも書かれています。
では次に雇用保険、健康保険および厚生年金保険の加入条件をサッと確認しておきましょう。
雇用保険の加入条件
雇用保険の加入条件は、次のとおりです。
・31日以上の雇用の見込み
・1週間の労働時間が20時間以上
雇用期間と労働時間によって定められているのです。
「正社員」でも「試用社員」でも加入条件は同じです(パート・アルバイトは労働時間が異なるので別です)。
なお、雇用保険には年齢条件がありませんから65歳以上でも加入が必要となります。
健康保険と厚生年金保険の加入条件
健康保険と厚生年金保険は5人以上を雇用していれば、ほとんどの会社が強制加入です。
会社は、従業員が正社員か試用期間中の社員であるかの「身分」には関係なく社会保険に加入させる義務があります。
おわりに
いかがでしたか ?
試用期間中に解雇されたら失業保険がもらえるのか ? また、試用期間中は社会保険に入れてもらえないのかについてお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?
試用期間と雇用保険や健康保険、厚生年金保険の関係については正しい知識を持っていることで、変な会社に入らずに済みます。
健全な会社に勤められますように !
最後までお読みくださってありがとうございました。