高年齢求職者給付金ってご存知でしたか ?
65歳以上の方のための失業手当みたいなものです。
65歳未満の求職者は「失業手当」を申請することができます。
それに対して65歳以上の求職者は「失業手当」を申請することができず、代わりに「高年齢求職者給付金」を申請することができます。
つまり、65歳を過ぎても働きたい方が失業したときに、求職活動をすれば「高年齢求職者給付金」をもらうことができるのです。
ここでは、高年齢求職者給付金について、受給し資格、受給額、そして失業手当との違い、さらに年金との関係について分かりやすくお伝えしたいと思います。
高年齢求職者給付金とは ?
高年齢求職者給付金とは、冒頭述べたように65歳以上の方のための失業手当みたいなものですが、失業手当とは違います。
まずは失業手当との違いをご説明しましょう。
高年齢求職者給付金と失業手当の違い
簡単に言うと次の表の通りです。
対象年齢 | 支給方法 | |
高年齢求職者給付金 | 65歳以上の求職者 | 一括 |
失業手当 | 65歳未満の求職者 | 28日毎 |
大きな違いは対象年齢が65歳以上かどうかと、支給が継続的か一括払いかということです。
高年齢求職者給付金の受給資格
高年齢求職者給付金の受給資格は次の通りです。
- 65歳以上の被保険者であって、短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者でないこと
- 離職により資格の確認を受けたこと
- 労働の意志及び能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあること
- 算定対象期間(原則は離職前1年間)に被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること
(出典 : ハローワークwebページ)
高年齢求職者給付金はいくら ?
高年齢求職者給付金は被保険者であった期間によって次のいずれかが支給されます。
ただし、失業手当金とは違って継続的に支給されるものではなく、一時金として一括で一回だけ支給されるものです。
被保険者であった期間 | 高年齢求職者給付金の額 |
1年以上 | 基本手当日額の50日分 |
1年未満 | 基本手当日額の30日分 |
ここで「基本手当日額」についてご説明しておきますね。
基本手当日額は次のように求められます。
まず、
退職直前の6ヶ月の賃金の合計÷180日
を計算します。
これを「賃金日額」と言います。
上の式の「賃金」とは残業代、通勤手当、役職手当などを含んだ総支給額のことです(ただし、ボーナス、退職金は含みません)。
離職時の年齢が 65 歳の場合の「基本手当日額」は「賃金日額」の50%~80%(上限6,815円)となります。
[離職時の年齢が 65歳以上](2022(令和4)年8月改定)
賃金日額(円) | 給付率 | 基本手当日額(円) |
2,657 円以上 5,030 円未満 | 80% | 2,125 円~4,023 円 |
5,030 円以上 12,380 円以下 | 80%~50% | 4,024 円~6,190 円 (※1) |
12,380 円超 13,670 円以下 | 50% | 6,196 円~6,835 円 |
13,670 円(上限額)超 | – | 6,835 円(上限額) |
※1 基本手当日額 = 賃金日額 x 80% – 賃金日額 x (賃金日額-5,030)/7,350) x 0.3
たとえば、賃金日額が13,000円だと仮定した場合、高年齢求職者給付金の額は次のようになります。
雇用保険加入期間が1年以上の場合
13,000円 x 50% x 50日 = 325,000円
雇用保険加入期間が1年未満の場合
13,000円 x 50% x 30日 = 195,000円
これが一時金としてもらえる額です。
大きい額とは言えないかも知れませんが、助かりますよね。
高年齢求職者給付金と失業手当どっちが得 ?
上の説明でお分かりのように、高年齢求職者給付金は最大で基本手当日額の50日分です。
それに対して失業手当金は最大で150日(雇用保険加入期間が20年以上、 自己都合退職の場合)です。
従って失業手当金の方が断然たくさんもらえることは一目瞭然です。
64歳の基本手当日額は次のようになります。
[離職時の年齢が 60~64 歳]
賃金日額(円) | 給付率 | 基本手当日額(円) |
2,657 円以上 5,030 円未満 | 80% | 2,125 円~4,023 円 |
5,030 円以上 11,120 円以下 | 80%~45% | 4,024 円~5,004 円 (※2) |
11,120 円超 15,950 円以下 | 45% | 54004 円~7,177 円 |
15,950 円(上限額)超 | – | 7,177 円(上限額) |
※2 次のいずれかの低い方
・基本手当日額 = 賃金日額 x 80% – 賃金日額 x (賃金日額-5,030)/6,090) x 0.35
・基本手当日額 = 賃金日額 x 5% + 4,448
仮に、64歳で退職したときの賃金日額が13,000円だと仮定した場合、失業手当の額は次のようになります。
13,000円 x 45% x 28日 = 163,800円
28日としたのは失業手当は28日ごとにもらえるからです。
これが最大150日もらえるのです。
つまり、支給合計額は最大で
150÷28 = 5.3回分で163,800円 x 5.3 = 868,140円
となります。
なので、65歳になる前に退職して失業手当を受けた方が得と言うことになります。
でも、ですよ。
高年齢求職者給付金は年金を受けながら受給できると言うメリットがあります。
一方、もしも年金の「繰り上げ支給」を受けている場合は、失業手当を受けている間、年金は受給停止となります。
また、65歳直前で退職して失業手当をもらった場合も、失業手当が支給されている間は年金を受けられません。
なので、トータルで考える必要があります。
受けられなくなる年金のトータル額ともらう失業手当の合計額を比較してご判断くださいね。
あと、失業手当についてはこちらに詳しくまとめてありますので、よろしければこちらをご参照ください。
忘れてならないのが年金
ここで、年金について見ておきましょう。
老齢基礎年金は、本来65歳から受給できるものですが、希望すれば60歳から65歳までの間なら「繰り上げ支給」を受けることが可能です。
ただし、「繰り上げ支給」を受けると、年金が減額されます。
しかも、その減額率は一生変わりません。
減額率は次のように計算されます。
減額率 = 0.5%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数
仮に、64歳で老齢基礎年金の繰り上げ支給を受ける場合なら、
減額率 = 0.5% x 12ヵ月 x 1年間 = 6%
となります。
ですから、生涯で受け取る額を考えると、
65歳になる前に退職して失業手当金を受ける方が得なのか、65歳になってから退職して高年齢求職者給付金を受けて且つ年金を受けるのが得なのかは、一概には言えなくなるのです。
もっとも何歳まで生きるかによりますが・・・。
「年金定期便」でもらえる年金額をチェックしてから決めると良いです。
ちなみに、60歳で老齢基礎年金の繰り上げ支給を受けた場合は、
減額率 = 0.5% x 12ヵ月 x 5年間 = 30%
つまり、3割も減額されて、それが生涯続くので、働くことが可能であれば年金は「繰り上げ支給」を受けずに65歳になってから受け取る方が「得」な場合が多いと言えます。
おわりに
いかがでしたか ?
高年齢求職者給付金について、失業手当との比較、また年金との関係についてもお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?
あなたが高年齢求職者給付金を良く理解されて年金と併用されるか、思い切って65歳前に退職してしばらく休職失業手当を受けるか、「年金定期便」をチェックのうえ、慎重にご判断くださいね。
より良い選択ができますようにできますように !
最後までお読みくださってありがとうございました。