派遣は途中で辞めることはできないのか ?
派遣の仕事についたけど、契約期間の途中で辞めたい場合はどうしたら良いでしょう ?
無理に辞めたら損害賠償を請求されるでしょうか ?
辞めたいと思うには、職場が合わないとか、聞いていた仕事と違うとか、あるいは転職したいとか・・・様々な理由があると思います。
理由によっては問題なく辞めることができます。
ここでは、派遣は途中で辞めることはできないのか、また辞めたら損害賠償を請求されるのか、さらに途中で辞めたいときはどうしたら良いかについて解説してゆきます。
派遣は途中で辞めると損害賠償を請求される ?
派遣は途中で辞めると損害賠償を請求されるのか ?
非常に気になりますよね。
結論を言えば、
法的には損害賠償を請求されることがあります。
一方で損害賠償を請求されることはない、断言する人もいます。
では、その両方の根拠をご説明しましょう。
損害賠償を請求されるという根拠
派遣の契約期間中に辞めると損害賠償を請求されるという根拠は、民法に有ります。
登録型(下の囲み「派遣の種類」参照)の派遣社員の場合は、有期雇用となります。
そして有期雇用の場合は、民法628条に「やむを得ない事由がないのに契約期間の途中で解約すると損害賠償の責任を負う」ことが定められています。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
これが派遣の契約期間中に辞めると損害賠償を請求されるという根拠です。
逆に言えば「やむを得ない事由があるときは契約期間中でも辞めることができる」ということです。
では「やむを得ない事由」とは何でしょう ?
例えば次のことがあげられます。
やむを得ない事由
①怪我や病気、心身の障害などで働けなくなった
②家族の介護が必要になった
③業務が法令に違反している
④ハラスメント行為を受けていた
これらの場合はたとえ契約期間中でも問題なく辞めることができます。
なお、「ほかの会社に転職したいから」は法的には「やむを得ない事由」にはなりません。
それでも途中で辞めたいときはしたら良いかは後ほどご説明します。
ちなみに派遣には次の2種類がありますが、ここでは登録型派遣の派遣を対象として解説しています。
なお、常用型派遣の場合は無期雇用ですから、法的には正社員同様に14日以前の申し入れで辞めることができますよ。
・派遣会社に登録して、派遣先が決定したときだけ派遣会社と雇用契約を結ぶ形態。
・雇用は不安定だが、好きな仕事だけを選べる。
・派遣会社の正社員または契約社員として雇用される形態。
・派遣先が見つからない期間も派遣会社から給料が支払われる。
・生活は安定するが、好きな仕事だけを選ぶという自由度はない。
では次に派遣契約期間の途中でやめても損害賠償を請求されないという根拠についてご説明しましょう。
損害賠償を請求されないという根拠
こちらは労働基準法第16条が根拠となっています。
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
「契約期間の途中で辞めたら契約不履行として損害賠償を請求する」ことを盛り込んだ雇用契約をしてはいけないということです。
ここで注意することは、あらかじめ金額を決めておくことは禁止していますが、現実に労働者が契約違反をして損害が発生した場合は、賠償を請求することを禁じてはいないということです。
たとえば、派遣期間の途中で辞めたで派遣会社が派遣先から派遣料の減額や賠償を求められた場合、派遣会社が辞めた派遣労働者に損害賠償を請求することができるのです。
以上から、
派遣契約期間の途中でやめたら損害賠償を請求され得る
というこがお分かりいただけたと思います。
実際は請求されるのか ?
では、実際はどうなのでしょう ?
筆者もいくつかの派遣会社とのお付き合いがありますが、派遣期間の途中で辞めた人に損害賠償を請求したという例は聞いたことがありません。
「○○社は途中で辞めると損害賠償請求するよ。」といううわさが広がると、多くの人は登録を躊躇してしまうのではないでしょうか ?
また、いちいち損害賠償請求などして争うのは会社としては面倒なのです。
ですから、よほどのことがない限り、期間の途中で辞めたからと言って損害賠償請求をされることはまずないと言えそうです。
そうは言っても、あまりに自分勝手で迷惑かけまくりの辞め方をすると、派遣会社も腹に据えかねて訴えを起こすこともあり得ますよ。
では、途中で辞めたいときはどうしたらよいか。
次の章でお伝えします。
派遣を契約期間の途中で辞めるには
ここまで、派遣を契約期間の途中で辞めると滅多に損害賠償を求められることはないが、可能性はゼロではないことをご説明してきました。
では、途中で辞めても損害賠償を求められずに、穏便に済ますにはどうしたら良いかについてお伝えしたいと思います。
ポイントは次の5つです。
①時期的に余裕を持って派遣会社に申し入れる
②相談という形をとる
③事情を正直に話す
④直接派遣先には言わない
⑤日頃から仕事を誠実にこなす
順にご説明しましょう。
時期的に余裕を持って派遣会社に申し入れる
これは最も大事なことです。
派遣会社はあなたに代わる別の人を探して派遣先に行ってもらわなければなりません。
そうしないと派遣会社が契約不履行になってしまうからです。
そこで、代わりの人を探す時間を可能な限り長く取れるように時間的な余裕を持って伝える必要があります。
相談という形をとる
派遣会社の担当者にこう切り出してください。
「契約期間のことでご相談がありますので一度お時間を取っていただけませんか ?」
いきなり、「いついつで辞めさせてください。」はNGです。
「相談したい」と伝えることで、相手に心の準備をさせる効果があります。
さらに、相手を立てているということが伝わります。
事情を正直に話す
実際に会ったときに、事情を正直に話す方が相手の理解を得られやすいです。
それにウソをついているという後ろめたさを感じなくて済むので精神的に負担になりません。
そして、「期間の途中で辞めることで、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」と謝罪の気持ちも伝えましょう。
相手も人間ですから、当然の権利のように「辞めさせて頂きます。」と言われると「こっちの迷惑も考えずに、なんてヤツだ。」と思います。
そうすると辞める時期の調整も親身には行ってもらえません。
じつは、派遣会社の人にとっては、「辞める理由」はどうでもよいのです。
顧客である派遣先にいかに迷惑をかけずに済むかが一番の関心ごとです。
派遣会社の一番の関心ごとは、「派遣先に極力迷惑をかけないで代わりの人を派遣できるか」ということです。
それでもウソを言うと後でほころびが出ることがありますから、正直が一番ですよ。
ただ、ひとつ注意すべきことは、途中でやめるともうその派遣会社からは次の派遣先を紹介してもらえなくなる可能性があるということです。
契約期間の途中で辞めると信用を失います。
それだけは覚悟しておきましょう。
おわりに
いかがでしたか ?
派遣は途中で辞めることはできるのか、辞めたら損害賠償を請求されるのか、さらに契約期間の途中で辞めたい場合はどうしたら良いのかについてお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか ?
あなたの疑問が解消できたら幸いです。
最後までお読みくださってありがとうございました。